2008-01-01から1年間の記事一覧

ワイルドカード4巻「ザヴィア・デズモンドの日誌」Ⅷその2前編

ザヴィア・デズモンドの日誌 G・R・R・マーティン 2月12日 カルカッタインドという名は世界に名高く、この旅においても不思議な響きをもって届いて きます・・・ 確かにインドは国として呼ばれてはいますが、正確には百もの国家が一つの 大陸にひしめいて…

ワイルドカード4巻「ザヴィア・デズモンドの日誌」Ⅷその2後編

ザヴィア・デズモンドの日誌 G・R・R・マーティンハイラム・ワーチェスターが約束を果たし戻ってきました。 ロンドン経由でコンコルドを乗り継いで来たのだとか・・ ニューヨークでの滞在は、だいぶ彼の気分をよくしたようであり、 以前の元気をも取り戻した…

ザヴィア・デズモンドの日誌パートⅨその1

ザヴィア・デズモンドの日誌 G・R・R・マーティン 3月14日 香港遅くには少し良くなったようで、そう言って差し支えないことと思います。 オーストラリアにニュージーランドの滞在はわずかな間であり、 シンガポールにジャカルタは近くをよぎったにすぎな…

ワイルドカード18巻第1章

ジョナサン・ハイブ1:ジェットボーイって誰なんだい? ダニエル・エーブラハムジェットボーイって誰なんだい? わたしが幼いみぎりに祖父が説明してくれたように思ったが、あまりよくはわからなかった。 空飛ぶエースさ、ワイルドカードがばらまかれる前か…

「零の刻」その14

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナー それは10時を少しすぎたころだった、バーニー・インに入ると、ちょうどキッチンからミーガンと名乗ったウェイトレスが出てきたところだった・・・ フォーチュネイトを目にするなり、息を飲んで、ミートパイの乗ったトレ…

「零の刻」その15

ハイラムの言葉に違わず、回廊の壁は石膏がむき出しとなった灰色で、突き当たりのドアにはターコイズのナウガハイドが貼られた上に、真鍮の釘が突き出たかたちになっている・・・ そこから一人のホステスが出てきて、フォーチュネイトの袖を引いたが、「すま…

「零の刻」その16

何とか12時にはハイラムの部屋の、ドアの前に立つことはできた、しかし鍵がかけられたままだ・・・ そこで精神を集中し、ドアを留めているボルト自体を外すことにした、そうしてドアは軋みをあげて開かれた・・・ハイラムはベッドに腰掛けている 「いった…

「零の刻」その17

精神のシールドを用いて、誰にも気づかれないようにして外に出た・・・ ゼロマンと同じ手を使ったのだ・・・ 血がカーペットに飛び散っていたため、モリの死体は部屋においたままにすることにした・・・ そこにタクシーが到着し、ペレが現れた・・ その傍ら…

「零の刻」その18完結

「ここだ」丘に張り付くような僧院が見えている、離れてではあるが、 石の庭園や、テラスもあるようだ・・・ 岩に積もった雪をそっと払いのけ、腰を下ろした。 もはや頭ははっきりしており、胃も痛んではいない・・・ おそらく清浄な大気というものが影響し…

ワイルドカード4巻「零(ゼロ)の刻 その1

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナーショーウィンドー内には忌々しいことに同じチャンネルに合わされたTVが、御丁寧にピラミッド状に積みあがっているときたものだ。 そこに映し出されているのは、Naritaナリタ・空港に到着した747型機。 画面はスパンして…

ワイルドカード4巻「零(ゼロ)の刻 その2

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナー泡立てた石鹸を、プラスチックの桶で体から丁寧に洗い流し、身体を清めて風呂桶に入るのは日本固有のエチケットだ。 日本においては、石鹸を身体につけたまま、Ofuroおふろに入ることは許されない、それは靴を履いたまま、…

ワイルドカード4巻「零(ゼロ)の刻」その3

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナーそれからわずか五日後で、陽が落ちる前、何もおこるはずはないありきたりの木曜の午後のはずだった。 Chikuyoteiチクヨ亭のキッチンで馴染みのウェイターに声をかけ、裏口から出ようとしたにすぎなかったのだ、 顔を上げる…

ワイルドカード4巻零(ゼロ)の刻(とき)その4

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナーニューヨークにロンドン、メキシコでも、大都市では歩いていける距離に公園が点在している、 ペレには腰を落ち着ける時間も必要なのだ。 しかし東京ではそうもいかない、土地が高すぎるのだ。 それでもフォーチュネイトの…

「零(ゼロ)の刻 その5

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナーハイラムは駅に近い手頃な値段のビジネスホテル、シャンピアホテル赤坂(現在はザ・ビー赤坂と改名している)の一室にいた。 ビジネスホテルとはいうものの、Hallways(回廊:玄関)が狭く靴を外で脱ぐ以外は、アメリカの中…

ワイルドカード4巻「零の刻」その6

ペレグリンに電話していた。 赤い線の入った市内通話専用の公衆電話で、 3分ごとにビーッという音がして10円硬貨 を入れなければならず、硬貨を握り締め電話 するはめになった・・・ 「見つけたよ」そう伝えた「助けはいらないそうだ」 「無事なのね」そ…

ワイルドカード4巻「零の刻」その7

ロッポンギ界隈は、ギンザの三キロ南西にあり、トウキョウの一角であり、 深夜には多くのクラブが花開く場所だ。 遅くにはガイジンが多く群がるディスコやパブもあり、そこには西洋人の ホステスもいるが、しばらくは距離を置いていた場所でもある・・ 深夜…

「零の刻」その9

股間に屹立するものを感じて目を覚ました。 ここ数ヶ月なかったことだ。 これは運命だ、そう己に言い聞かせる。 ペレが彼の元に現われ、再び力を使うことが 必要とされている、力を取り戻すべく 運命に導かれたといえまいか・・・ いやはたしてそうだろうか…

「零の刻」その8

ロッポンギ界隈のバーはあらかた周り、目ぼしいところは二度当たりはしてはみた・・・ 少なくともそうすべきように思えたわけだが、 もちろんハイラムもそうしていたであろうし、別の界隈である可能性も拭いきれない。 だとするならば完全な徒労となるわけだ…

「零の刻」その10

一時間ほど眠りに落ちていたらしい、気だるい疲れを感じながら目をさますと、ペレが後ろに立っていて、気遣わしげに見つめていた。 「大丈夫なの?」 「ああ、そうだな」 「以前のようにはならなかったわね」 「ならなかったな」手を見つめそう答えていた。 …

「零の刻」その11

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナー ロビーでハイラムを呼び止めたが、「出よう」と返された。 「一端出るとしよう」 「何かまずいことでも」 「単に場所を変えたいだけさ」 そこでタクシーを呼びとめ、灰色のアカサカシャンピアに戻っていた・・・ 「何かあ…

「零の刻」その12

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナー朝の菩提樹の木陰は、幾分涼しいとはいうものの、空を見上げると、薄くミルクの濁ったような靄がかかっている・・・ スモッグと呼ばれる靄だ・・ 他にも西洋の言葉だと彼らが考えて用いている言葉はある、混雑を表すラッシ…

「零の刻」その13

それでもやはり胃は痛む。 もちろんベントーのせいじゃない。 内から己を食い尽くそうとする心の奥のストレスが原因なのだ。 ハルミドオリに戻って、ギンザの一角を目指した。 そうこうしているうちに、陽は落ち、周囲は闇に包まれていき、通りの至るところ…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪パート5」その4

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リーホテルのドアを叩く音で目を覚まされた。 まだ思い通りにならない身体を引きずりながら時計に目をやると、現地時間で1時35分、 えらく遅い時間だ、まだジェット機関は調整中だし、グレッグが来るには早すぎる。 う…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪パート5」その5

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー 1987年 2月4日 シリア砂漠にてなんと狷介で侘しい光景だろうか、ローターによって跳ね上げられた煤で薄汚れた窓越しながら、荒涼とした大地だ、 生命はといえば僅かな緑が砂漠地帯の乾燥した火山岩に張り付くように…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪」パート5その6

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー 1987年 2月4日 シリア砂漠にて「・・そういった存在がヌール・アル・アッラーだというのでしょうか?だとしたら、それはアッラーの意思などではなく、人のエゴに他ならないのではないでしょうか?」あえぎながら発…

ワイルドカード「綾なす憎悪」パート5その7

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー「それは許されることではない」間抜けにも、ヌール・アル・アッラーのサンダルに手を伸ばし指を向けた格好になりながらその言葉を聴いた。 パペットマンのおかげで、気力は保たれている。 それでも山のごとく聳え立つ…

ワイルドカード「綾なす憎悪」パート5その8

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー 「さよう・・さぞや見ものであろうな」 これがそうなの・・・ あらゆることが頬をはるように感じられた。 言葉だけではない、礫殺されたジョーカーに、タキオンに対する仕打ち、 そういった行動、傲慢さをみせつけよ…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪」パート5その9

ヌール・アル・アッラーの輝く指で示され詰問されるグレッグをよそに、 なぜか視線はカーヒナに吸い寄せられていた。カーヒナの身震いし、弟に視線を向けながらも何も映していないその瞳は、 それでいて強い何かを感じさせ、ヌール・アル・アッラーの言葉の…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪」最終章

ヌール・アル・アッラーに詰問の指を向けられながらも、 まだ希望の残されていることはわかっていた。 カーヒナだ、ヌール・アル・アッラー自体は操れなくとも、 カーヒナの内の深淵ならば、思うままにあふれさせることが できるのだから。」 あとはためらう…

ザヴィア・デズモンドの日誌 

ザヴィア・デズモンドの日誌 G・R・R・マーティン 1月30日 エルサレムエルサレムはOpen City (分かち合われた都市)だと人は言います。 たしかにイスラエル、ヨルダン、パレスチナ、英国といった国連から委託された理事による共同での 統治がなされており…