「零の刻」その18完結

「ここだ」丘に張り付くような僧院が見えている、離れてではあるが、
石の庭園や、テラスもあるようだ・・・
岩に積もった雪をそっと払いのけ、腰を下ろした。
もはや頭ははっきりしており、胃も痛んではいない・・・
おそらく清浄な大気というものが影響しているのだろう・・・
「何て美しい光景だろう」ジャヤワルダナが跪いて感動を表している・・・
夏までには、まだ一月半ほどあるが、空は晴れ渡っており、飛び立っていく747機が次第に離れていく姿が見えるようにすら思える・・・
もちろん韓国に向かうのだから、もう少し南西であろうし、ホッカイドー上空は通過しないのだが・・・
「水曜の夜になにがあったんだ?」
沈黙のあとにジャヤワルダナが尋ねてきた。
「あのときの騒動を話したいのじゃないか」
「とりたて話すこともない・・金が絡んだ話があって、若い男が一人生命を落とした、仕事をして、名を上げようとしたが、誰の生命を奪うこともなく、若い身空に散ったのだ・・」
「トウキョウではよくある話だ、とりたて珍しいことではないそういって雪をズボンからはらいのけて立ち上がってから尋ねた。
「もういいのか」
「ああいいとも・・ずっとこのときを待ちわびていたのだから・・」そのジャヤワルダナの声にフォーチュネイトは頷いてこたえた。
「そうして受け入れるんだ・・」と・・・