2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「手繰られしものたち」その25〜26

恐怖の感情が高まっている。癌のようなしこりとなって、黒く曖昧な感情が脳の奥に広がるように感じられ・・心臓が脈打ち、肋骨がその脈動で振動するようにすら感じられる・・・喉は渇き、ひりひり痛み・・頬は焼け付き、斎場の火炎をのぞいているかのよう・…

「手繰られしものたち」その27〜29

マッキーは手の平をドアに打ちつけ続けた。 モルニヤはマッキーを見捨て、行ってしまったのだ・・・ 胸が痛む、その痛みは耐えがたく・・・ 手を振動させ、鋼鉄の扉を切り開いていた・・ ウルフはそこに立ち尽くしている・・ ウルフは彼を止めることができた…

「手繰られしものたち」その30

マッキーは左手で、ウルリッヒの喉から尻まで一気に切り裂いた。 その心地よい感覚は骨の髄まで感じられ、勢いが増していく・・・ ウルリッヒは手をだらんとたらし、そんなマッキーを見つめていたが、 唇を剥いて、その下の完璧とも思える調った歯を三回かち…

「手繰られしものたち」その31〜32

モルニヤは、手を膝に乗せ、縞模様のボルボにもたれて立っていた。 そこで深く息を吸い込むと、ベルリンの夜気に、ディーゼルの排気が 混じって違和感として感じられた。 この町自体、異邦人が一人で長く過ごす場所ではなかったのだ・・ そう己に言い聞かせ…

「手繰られしものたち」その33

充分な距離をとってアネッケの後ろに立っている、そうして肘まで挿しいれた手の振動を一端止めてから、刃を引くように抜きさった・・・ そうして迸った血が、ジャケットの袖を濡らしていくのをじっと眺めている・・・ その手にはアネッケの心臓が握られてい…

「手繰られしものたち」その34

ベルリンの下町をまだらなサーチライトに照らされながら装甲車が行く。 そこに乗せられたセイラは、前に座っているGSG-9の男たちを視界にいれながらも、その思いは内に向かっていた。 私はどうしてしまったのだろうか ハートマンへの愛情が形を失い、以前ほ…

「手繰られしものたち」その35

叫び声が止んで、ブーンという唸りも治まった。 それは永遠に続くのではないかと怖れてはいたが、ともあれ 焼け焦げた髪と骨の匂いが鼻につき、むかむかしてならない・・・ Boschボスによって描かれた中世の、幻想絵の饗宴のように感じられる・・・ 死にゆく…

「手繰られしものたち」その36完結

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン グレッグ・ハートマン上院議員はドアを開け放った。 ドアのガラスはすべて砕け散っている。 その鋼鉄のフレームにもたれ冷たい感触を味わいながら、道に目を凝らすと、 大破した車に割れたアスファルトの間から雑草が…