2009-01-01から1年間の記事一覧

ワイルドカード18巻第1章

ジョナサン・ハイブ1:ジェットボーイって誰なんだい? ダニエル・エーブラハムジェットボーイって誰なんだい? わたしが幼いみぎりに祖父が説明してくれたように思ったが、あまりよくはわからなかった。 空飛ぶエースさ、ワイルドカードがばらまかれる前か…

ワイルドカード5巻「一縷の望み」その1

The Hue of a mind 一縷の望み スティーブン・リー 水曜 午前9時15分 あれからもう七日になる、ニューヨークに辿り着いて、なぜかギムリや取り巻きのAbomination醜い 怪物(ジョーカーのこと)と夜毎顔をあわせるようになっている。あれからもう七日にな…

ワイルドカード5巻「一縷の望み」その2

一縷の望み スティーブン・リー 金曜、午後6時10分 「うわさは本当だったんだな、あんた戻ってきたんだ」 その声は彼の後ろ、中身の溢れかえったゴミ溜め・・・その影から届いてきた ものであり、ギムリは悪態をつきながら振り返らねばならなかった。 夕…

「一縷の望み」その3

一縷の望み スティーブン・リー屋根にはVideoヴィデオがいて、あの女に手を振って否定を示しながら、影がかたちを とったように現れたシュラウドにうなずいている・・・鉄骨を通しながらも、ギムリには くぐもった声によるそのやり取りを雷鳴のごとく聞き取…

「一縷の望み」その4

月曜午後2時30分 弟の声を思い出す、ヌール・アル・アッラーはまだミーシャがカーヒナと呼ばれていたときに、その雄弁な声で死後の苦しみについて語っていたではないか・・・ ミンバルから響くその力強い声は、バディア・アッシャームのモスクにこもる午…

「一縷の望み」その5

月曜7時32分ギムリがいらいらしていたのは、ポリアコフが最後に、それもだいぶ遅くに現れたからばかりではない・・・ ニューヨークJJSの古馴染みたちももはや信用はならなくなっていたのみならず、ここ二週間の間は、ミーシャのジョーカーに対する蔑みに…

「一縷の望み」その6

火曜午後10時50分ギムリが言っていた、セイラのアパートを誰が見張っているかわからないと・・・ あの侏儒は被害妄想気味であるとは思っていたが、それでも辺りに人の姿がなくなるのを待ってから、前の通りを横切った、夫のサィードは、ヌール・セクトの…

「一縷の望み」その7

火曜午後10時オフィスのドアを開けて、目の前のデスクの上に裸足の脚を放り投げた侏儒が腰掛けているのを目にしても、クリサリスはそれに構わず、落ち着きはらったままドアを閉じた・・・ クリスタルパレスではこれがいつものことででもあるかのように・・…

「一縷の望み」その8

火曜午後11時45分クリサリスのところを出てからずっとふらふらしていて、ヴァンで待っていたファイルに、一人で帰ると言ってしまったのだ・・・Fuck the risk(なんて迂闊だったのだろう)逃げ回るのにも疲れたし、用心するから、と言い放ってしまった・…

「一縷の望み」その9

一縷の望み スティーブン・リー 水曜午前12時45分白昼夢に襲われたのは、倉庫のドアを開けようとしていたときだった・・・文字が液体のように流れ、鉛の人影が火に投じられたかのようにたわみ・・・ 闇に覆われた中、笑い声のみが耳に届く・・・ ハート…

「一縷の望み」その10

木曜午前3時40分クリスタルパレスの裏通りで、黒い外套を着た巨体が道化の仮面をつけた男に身体を寄せて囁いた。 外套の下の顔はフェンシングの仮面を着けているようだ。 「大丈夫です、上院議員、もはや誰も残っていません……」その幻影のような巨体がさ…

「一縷の望み」その11完結

木曜午前7時35分セイラはジョーカータウンクリニックの南側の一角におちつかなげに立ち尽くしていた、カナダから移住してきたなら涼しいともいえる場所だというのに・・・ 横切る雲が、路面に染みのように広がるのを見ながら、また腕時計を見つめることに…

ワイルドカード4巻「背負いし獣」その1

背負いし獣 ジョン・J・ミラー 妬み、憎悪、そしてMaliceマリス(悪意)、 誰しもがそれら悪徳を持ち合わせている、 いや背負わされているのやも...... 〜Litany、リタニー、祈りの言葉より〜 性器が発達しておらず、男性として機能していないにも係わらず、…

ワイルドカード4巻「背負いし獣」その2

背負いし獣 その2 ジョン・J・ミラー ティ・マリスはことに性交によって得られる感覚を好んでいる。 特に女性をMount依代にした際に、その感覚は顕著に感じられる。 女性というものは総じて、快楽の感覚というものが、男性に比して 持続しやすく、興奮状態…

ワイルドカード4巻「ザヴィア・デズモンドの日誌」パートⅩその1

G・R・R・マーティン 3月21日 ソウルへの途上にて 過去がわたしを追いかけてきたように思えたのです。 そんな想いがわたしのこころを蝕んでおりました。 二日前には彼の存在において思い返された事柄を押し殺し、 この日誌には綴らないと決めていたのです…

ワイルドカード4巻「ザヴィア・デズモンドの日誌」Ⅹその2

ザヴィア・デズモンドの日誌 G・R・R・マーティン まずはひどい話をすることをお許しいただきたい・・・ 老人でありジョーカーであるということは、歳月と奇形というものが同時に積み重ねっているといえ、それはそれでつらいのですが、一番つらいことは捨て…

ワイルドカード4巻「ザヴィア・デズモンドの日誌」ⅩⅠその1

ザヴィア・デズモンドの日誌 G・R・R・マーティン 4月10日 ストックホルムとてもくたびれています。 医者の断言したことを認めたくない・・ この旅が間違いであったなどと思いたくないのに、 身体がそれを裏づけてしまっているのです。 はじめの数ヶ月は…

ワイルドカード4巻「ザヴィア・デズモンドの日誌」ⅩⅠその2

ストックホルムという街は、これまでのどの街より過ごしやすく、スウェーデン人の多くは実際英語を話すため不自由もありませんし、今回は自由行動(もちろん厳しいスケジュールの合間においてではありますが)が認められています・・・ 王も我々すべてに対し…

ワイルドカード4巻「ザヴィア・デズモンドの日誌」ⅩⅡその1

ザヴィア・デズモンドの日誌 4月27日 大西洋上 数時間前には室内灯も消えました。 ほとんどのものたちは眠りに落ちているようですが、私は痛みゆえ目がさえたままです。 薬の助けを借りようと服用しましたが、それでも眠りに落ちることはできませんでした…

ワイルドカード4巻「ザヴィア・デズモンドの日誌」ⅩⅡその2最終章

テロも流血沙汰ももうたくさんですが。少なくともそれは無益なものではなかった、と信じたいものです。 我々の報告が衆目にさらされたならば、第三世界における、ジョーカーの苦境に対する関心も増す、というものでありましょうから。 個人レベルにおいても…

ティーポット

アンデルセン昔、ある所に自分は、磁器であり、その長い注ぎ口、たっぷりした もち手を自慢するティーポットがいました。 でも、ふたのことは口にしませんでした。 割れて、かすがいで塞いであったからです。 まわりの人は、ふたのことばかり話します。 言わ…

ワイルドカード4巻「手繰られしものたち」その1

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン唄にも例えがあるように、マクヒースにジャックナイフとくりゃ、 マッキー・メッサーにゃ隠し玉がある、容易に見せない切り札さ・・・ ディーゼルfarts(屁:排気)でCool Airすました大気をBlowing切り裂いて Kurfurs…

ワイルドカード「手繰られしものたち」その2

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン雨がじとじと降りしきる、そうしてメルセデス製リムジンの屋根を濡らしていく。 「上院議員、会食では影響の強い方々と大勢お会いになるのでしょうね」 まだ若く見える黒人の青年がひょろりとした面を輝かせて、運転席…

ワイルドカード4巻「手繰られしものたち」その1

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン ‘マクヒースはジャックナイフを持ってる…’ (「マック・ザ・ナイフ」の)歌ではあるように マッキー・メッサーはもっといい物を持ってる。 ジャックナイフよりもずっと隠しやすいもの… マッキ―はクルフルステンダムの…

ワイルドカード4巻「手繰られしものたち」その1

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン唄にも例えがあるように、マクヒースにジャックナイフとくりゃ、 マッキー・メッサーにゃ隠し玉がある、容易に見せない切り札さ・・・ ディーゼルfarts(屁:排気)でCool Airすました大気をBlowing切り裂いて Kurfurs…

ワイルドカード4巻「手繰られしものども」その3

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン 位相の変化を解き、再び大地を踏みしめ、スキーマスクを脱いだ。 「俺を撃ちやがったな、(位相を変えなければ)死ぬところだったじゃねぇか」 Anenekeアネッケにくってかかったその声には殺気がみなぎっていたが、 …

ワイルドカード4巻「手繰られしものたち」その4

手繰られしものたち ヴィクター・ミランNECのラップトップを片手で支えたまま、注意深くあたりをうかがいつつ、 Bristol Hotel Kempinskiブリストルホテル・ケンピンスキイのロビー を忙しくセイラは駆けていく。 おそらく情報の信憑性を確かめるべくoutside…

ワイルドカード4巻「手繰られしものたち」その6

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン「生きとし生けるものの世界へようこそ、上院議員、とはいえ期間限定かもしれんがな」 その言葉を脳の一部で知覚しながら、ハートマンの意識はゆっくりと世界を認識し始めていた。 舌には微かな苦味が、耳には旋律を、…

ワイルドカード「手繰られしものたち」その7

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン「何か打つ手はないものか」ハイラム・ワーチェスターはそう呟きながら、顎髭の下で指を組み、 窓の外に広がる、ベルリンの曇り空に視線を据えている。 ディガー・ダウンズが広げたカードはクラブの3だった、これもま…

「手繰られしものたち」その8

手繰られしものたち ヴィクター・ミランそれはFederai criminal office連邦刑事局から来た男だった。 シティ・ホールの対策本部で、デスクの角で煙草の箱を軽く叩くようにして 煙草を取り出し、それを唇の間に咥え込んだ・・・ 「これが地球人の流儀だという…