2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ワイルドカード6巻第三章その13

スティ−ブン・リー 1988年7月20日 午後12時深夜 顔全体を覆うゴム製の道化のマスクを被って・・・ ジョーカー達の多くがアトランタのじとつく湿気から 涼を得ようとして外に出ている中・・・ グレッグは彼らに紛れていった・・・ 気温は華氏90度くらい…

ワイルドカード6巻第三章その14

ウォルトン・サイモンズ 1988年7月20日 午後12時深夜 見えてはいないが、そこにいるのはわかっていた・・・ 束になった人々、グレッグとその取り巻きたちが・・・ スペクターの方に向かってきている・・・ 思いもよらず音もなく・・・ 御誂え向きにすぐに…

ワイルドカード6巻第四章その1

1988年7月21日 午前1時 「まったくなんてざまだ・・」 その切り裂くような鋭い声に、思わず 弦に当てた弓を取り落としてしまった・・・ その声の主のハイラムが、真っ赤に充血して 落ち窪んだ目でこちらを睨みつけているでは ないか・・・ 「ハイラム、時…

ワイルドカード6巻第四章その2

ヴィクター・ミラン 1988年7月21日 午前5時 「本気であそこに出て行くおつもりですか、マダム」 制服を着た運転手が窓を少し開け・・・ 雨後の筍のようにピードモントパークに増えたテント村 に胡乱な目を向けながらそんな言葉をかけてきた・・・ 日もま…

ワイルドカード6巻第四章その3

スティーブン・リー 1988年7月21日 午前9時 どうもあまりよく眠れた気がしない・・・ 開票が朝方まで及んでそのまま戦勝祝いに もつれこむことになったのだ・・・ 1800票超えを達成して、2081票 獲得も確実と思える中・・・ 「あと300票なら…

その4

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月21日 午前9時 「アイオワは神に祝福された豊かなトウモロコシの州だからな!」 タキオンには何回もある予備選でこの男がなぜここまで盛り上がれるかが 理解できていなかった・・・ 「ほらアル・ゴア上院議員に4票入…

その5

ウォルター・ジョン・ウィリアムス 午前9時 電話が鳴ったのは、最初のキャメルを吸っていたときだった・・・ 確か書類バッグに入れていたはずだがすぐには見当らず・・・ コーヒーテーブルの下にあるのを見つけ、長椅子の上で寛ぎながら 電話に出た・・・ …

その6

ヴィクター・ミラン 1988年7月21日 午前9時 そのときは問題ないと思えていたのだ・・・ 気がついたら眠気眼を擦りながら機械的にインタビューを こなしていて・・・ 日曜日の第三面に載る補足記事のようなあるいはタンク機関車が 給水のために停車するよう…

その7

メリンダ・M・スノッドグラス 午前11時 「ドクター!」 柔和な顔に不似合いなその鋭い瞳は・・・ マリオットのロビィにいる何者をも見逃さないと みえる・・・ タクはその言葉に軽く会釈して返した・・ 「師父」 「党大会から逃れておいでですかな?」 「幾…

その8

スティーブン・リー 午前12時正午 テーブルの上にはルームサービスの食事とコーヒーが あるが手付かずのまま冷めていて・・・ ソニー(TV)の画面が省みられることもなく揺れている・・・ そこで長椅子に腰掛けたタキオンの姿は・・・ まるで木でできた神像…

その9

メリンダ・M・スノッドグラス 午後1時 乱闘になりかけて引き離された人々がいる・・・ 見ればニューヨークの代議員とフロリダの老女が 角つき合わせている最中のようだった・・・ 女性は二人いて唸るようにして爪を振り上げている・・・ そこにはハイラムも…

その10

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月21日 午後3時 ガラスで仕切られたCNNのブースは・・・ 部屋の中央で天につるし上げられたような場所に違いなく・・・ 気の進まぬままタキオンはそこに上がっていきながら・・・ こころの裡にジャーナリスト達と…

その11

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ 1988年7月21日 午後3時 電話は鳴り続けている・・・ それはベロ・モンドでの会食中ずっと なり続けていて・・・ いい加減うんざりしかたところだった・・・ 隣り合った席のアメリカを代表する人々も 嫌な顔をしている…

その12

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月21日 午後4時 「何か飲みますか?」 「いりません・・・」 腕で胸を守るようにしてそう応えたのを見て たまらずボトルを手に取っていた・・・ アルコールに依存しているのはわかっているが、 素早く別のボトルに…

その13

ヴィクター・ミラン 1988年7月21日 午後6時 やっと夜になった・・・ 鉢植えの植物の陰に隠れてこのときを待っていたのだ・・・ マリオットのロビィでそうしていると・・・ アトランタの下町に出没するある種の獣になったように思えて いたところだった・・…

その14

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ 1988年7月21日 午後6時 「アラバマに星落ちて」が演奏されているのを耳にした ジャックは・・・ 政治くささが鼻についてならないと思いつつも・・・ 11回も投票が行われたような状況では仕方ないか・・・ とも思え…

その15

ウォルトン・サイモンズ 1988年7月21日 午後6時 北高速は渋滞している聞いていたが・・・ トニーはどんな違法な手を使ったのかなんなく すり抜けたかのように姿を現した・・・ それはそれとして・・・ とスペクターは思う・・・ 食事はマリオットでなく…

その16

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月21日 午後7時 突然目が覚めた・・・ 完全なといってよい状態で・・・ 満たされた、といってよい気分で・・・ より正確にいうならば・・・ 空っぽで漂うような抑圧と困惑にとらわれた 寄る辺なき状態からようやく…

その17

ウォルトン・サイモンズ 1988年7月21日 午後7時 さすがに我慢できず手を出した・・・ スペクターの前にはサラダとラム肉のシチューが出されている のだ・・・ Spezzatinno de Montone やつらしい・・・ 一口食べてみると、たしかに悪くない味だ・・・ ト…

その18

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月21日 午後7時 旧に復したということだろうか? 具合は悪くない・・・ 赤茶けた下生えの中から屹立した それを眺めていると笑みが零れ・・ フルールの腿を広げて・・・ 勢いづいてそれに向かいながら・・・ 味わい具…

その19

ヴィクター・ミラン 1988年7月21日 午後8時 シダの葉が勢いよく落ちて顔にかかる中、 立ち尽くし・・・ マッキー・メッサーはセイラと大柄な男が 連れ立ってレストランから出て行くのを 見ていた・・・ こうして一日中あの女の跡をつけながら・・ なんと…

その20

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ 午後8時 たらふく飲んだのと、疲れ、それに暴食も相まって・・・ セイラは膝が笑ったような状態になっていて・・・ ガラス張りのエレベーターに乗り込んだときには ジャックにもたれかかるようなかたちになっていた・・・…

その21

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ マリオットの中庭をゆっくりと落下しつつ・・・ 端からみてると間抜けに見えるだろうなと思いながら・・・ ともかく手足をばたつかせてみたが・・・ バルコニーからは大分離れてしまっていて・・・ 眩暈にも似た恐怖に囚わ…

その22

ウォルトン・サイモンズ 向かっているのは、いわばアトランタのジョーカータウンと いった場所らしい・・・ もちろんジョーカータウンというのはニューヨークにある 場所の固有の名なのだが・・・ 他の主要な都市にもそういった奇形たちのふきだまった ゲッ…

その23

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ 午後8時 ピアノの上に衝突するかたちで落ちたわけだが・・・ 今は驚くことに自分であけた穴の上に身体が浮き上がっている・・・ 身体が空気よりも軽くされているように思える・・・ ハイラムの仕業で・・・ 上に向かって…

ワイルドカード6巻第4章

ウォルトン・サイモンズ 1988年7月21日木曜 午後10時 無事店を出ることができてほっとしたところだった・・・ 口々に別れの言葉を交わし合ったが・・・アルマンドは黙ったままだった・・・ おそらく生来無口なたちなのだろう・・・ ドアを出たところでト…

ワイルドカード6巻第五章その1

スティーブン・リー 1988年7月22日 午前6時 そろそろ闇に薄明が照り始めるころ合いだろうか・・・ エアコンは寝惚けたたちの悪い獣と薄闇に跳ね回る悪魔が競って 天井を目指しているかのようなひどい音を立てている・・・ グレッグは手の震えと不安衝動…

その3

スティーブン・リー 1988年7月22日 午前8時 ビリィ・レイが開いたドアから首を突っ込むようにして 言葉をかけてきた・・・ 「警備の人間から階段には誰もいない、という報告が 上がっていますが、お二人のご都合はいかがですか?」 「今出るところだよ・・…

その2

午前7時 ウォルター・ジョン・ウィリアムズ 「Jesus Christ(おいおい)そんなに強く掴まないでくれるか?」 ジャックはタキオンの手を掴んで、撥ねた水でも払うように振り払いながら そう悪態をつかずにいられなかった・・・ 「Jesus(まったく)」 タクは…