その13

         ヴィクター・ミラン
         1988年7月21日
           午後6時



やっと夜になった・・・
鉢植えの植物の陰に隠れてこのときを待っていたのだ・・・
マリオットのロビィでそうしていると・・・
アトランタの下町に出没するある種の獣になったように思えて
いたところだった・・・
この時間になれば、人通りも少なくなるというものだろう・・・
そろそろ動く頃合いだ・・・
人ごみに紛れ・・・喧騒に隠れて・・・
そうして身をさらすということは・・・
当然のことながら・・・
死に近づくことに等しいといえるだろう・・・
夜の闇というものは、ハートマン子飼いのあの背の盛り上がった
傀儡にとっても活動しやすい環境といえるだろうから・・・
それがわかっているからこそ・・・
誰かを巻き込む必要がある・・・
夜の顎に飲み込まれる前に・・・
タキオンはうまくいかなかったし、リッキィを巻き込んだ経緯も
ふまえて考えねばなるまい・・・
あれからもう24時間近く無駄にしてしまったわけだが・・・
十分な力があって、安い代償でうごく者ならなおいいだろう・・・
日の車輪が落ちきるころ・・・
ひとつの考えに思い至った・・・
いるではないか・・・
お誂え向きの男が。と・・・