ワイルドカードXV 

           ジョン・J・ミラー

 

レイは轟音に目を閉じていて、顔と腹に何かヌメッとしたものが

かかったのを感じ、目を開け、呆然としながらも、

死んではいないことがわかった。

吹き飛ばされていなければ、粉微塵になってもいない。

では血が流れたというのだろうか?

手で顔を拭ってみると、緑色の塊がかかっていたことがわかった。

どうやら血が流れたのではなく、ガレージの中にいた芋虫が吹き

飛ばされたと見え、ばらばらになった身体が散らばっていた。

その三本の脚の痕跡を見つめ、それが誰かをレイは悟っていた。

「ハートマン、あんたって奴は、最後の最後にヒーローに

なりやがった」

 

核の爆発は阻止できたものの、別のありふれた罠が作動して、

生命を落としたということらしかった。

 

がれきの下からうめき声がもれてきた。

そこにドッグの姿を認め、引きずり出して、

Goddamnちくしょう」そう悪態をついていた。

核爆発は阻止できて、ブラックドッグの身柄もこの手で

確保できたではないか。

任務はまっとうできた。

それなのに、

Golddamnこんちくしょうが」そう繰り返さざるをえなかった。

まだやるべきことが残っていたからだ。