ジョン・J・ミラー
レイは轟音に目を閉じていて、顔と腹に何かヌメッとしたものが
かかったのを感じ、目を開け、呆然としながらも、
死んではいないことがわかった。
吹き飛ばされていなければ、粉微塵になってもいない。
では血が流れたというのだろうか?
手で顔を拭ってみると、緑色の塊がかかっていたことがわかった。
どうやら血が流れたのではなく、ガレージの中にいた芋虫が吹き
飛ばされたと見え、ばらばらになった身体が散らばっていた。
その三本の脚の痕跡を見つめ、それが誰かをレイは悟っていた。
「ハートマン、あんたって奴は、最後の最後にヒーローに
なりやがった」
核の爆発は阻止できたものの、別のありふれた罠が作動して、
生命を落としたということらしかった。
がれきの下からうめき声がもれてきた。
そこにドッグの姿を認め、引きずり出して、
「Goddamnちくしょう」そう悪態をついていた。
核爆発は阻止できて、ブラックドッグの身柄もこの手で
確保できたではないか。
任務はまっとうできた。
それなのに、
「Golddamnこんちくしょうが」そう繰り返さざるをえなかった。
まだやるべきことが残っていたからだ。