2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「零の刻」その9

股間に屹立するものを感じて目を覚ました。 ここ数ヶ月なかったことだ。 これは運命だ、そう己に言い聞かせる。 ペレが彼の元に現われ、再び力を使うことが 必要とされている、力を取り戻すべく 運命に導かれたといえまいか・・・ いやはたしてそうだろうか…

「零の刻」その8

ロッポンギ界隈のバーはあらかた周り、目ぼしいところは二度当たりはしてはみた・・・ 少なくともそうすべきように思えたわけだが、 もちろんハイラムもそうしていたであろうし、別の界隈である可能性も拭いきれない。 だとするならば完全な徒労となるわけだ…

「零の刻」その10

一時間ほど眠りに落ちていたらしい、気だるい疲れを感じながら目をさますと、ペレが後ろに立っていて、気遣わしげに見つめていた。 「大丈夫なの?」 「ああ、そうだな」 「以前のようにはならなかったわね」 「ならなかったな」手を見つめそう答えていた。 …

「零の刻」その11

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナー ロビーでハイラムを呼び止めたが、「出よう」と返された。 「一端出るとしよう」 「何かまずいことでも」 「単に場所を変えたいだけさ」 そこでタクシーを呼びとめ、灰色のアカサカシャンピアに戻っていた・・・ 「何かあ…

「零の刻」その12

零(ゼロ)の刻 ルイス・シャイナー朝の菩提樹の木陰は、幾分涼しいとはいうものの、空を見上げると、薄くミルクの濁ったような靄がかかっている・・・ スモッグと呼ばれる靄だ・・ 他にも西洋の言葉だと彼らが考えて用いている言葉はある、混雑を表すラッシ…

「零の刻」その13

それでもやはり胃は痛む。 もちろんベントーのせいじゃない。 内から己を食い尽くそうとする心の奥のストレスが原因なのだ。 ハルミドオリに戻って、ギンザの一角を目指した。 そうこうしているうちに、陽は落ち、周囲は闇に包まれていき、通りの至るところ…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪パート5」その4

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リーホテルのドアを叩く音で目を覚まされた。 まだ思い通りにならない身体を引きずりながら時計に目をやると、現地時間で1時35分、 えらく遅い時間だ、まだジェット機関は調整中だし、グレッグが来るには早すぎる。 う…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪パート5」その5

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー 1987年 2月4日 シリア砂漠にてなんと狷介で侘しい光景だろうか、ローターによって跳ね上げられた煤で薄汚れた窓越しながら、荒涼とした大地だ、 生命はといえば僅かな緑が砂漠地帯の乾燥した火山岩に張り付くように…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪」パート5その6

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー 1987年 2月4日 シリア砂漠にて「・・そういった存在がヌール・アル・アッラーだというのでしょうか?だとしたら、それはアッラーの意思などではなく、人のエゴに他ならないのではないでしょうか?」あえぎながら発…

ワイルドカード「綾なす憎悪」パート5その7

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー「それは許されることではない」間抜けにも、ヌール・アル・アッラーのサンダルに手を伸ばし指を向けた格好になりながらその言葉を聴いた。 パペットマンのおかげで、気力は保たれている。 それでも山のごとく聳え立つ…

ワイルドカード「綾なす憎悪」パート5その8

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー 「さよう・・さぞや見ものであろうな」 これがそうなの・・・ あらゆることが頬をはるように感じられた。 言葉だけではない、礫殺されたジョーカーに、タキオンに対する仕打ち、 そういった行動、傲慢さをみせつけよ…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪」パート5その9

ヌール・アル・アッラーの輝く指で示され詰問されるグレッグをよそに、 なぜか視線はカーヒナに吸い寄せられていた。カーヒナの身震いし、弟に視線を向けながらも何も映していないその瞳は、 それでいて強い何かを感じさせ、ヌール・アル・アッラーの言葉の…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪」最終章

ヌール・アル・アッラーに詰問の指を向けられながらも、 まだ希望の残されていることはわかっていた。 カーヒナだ、ヌール・アル・アッラー自体は操れなくとも、 カーヒナの内の深淵ならば、思うままにあふれさせることが できるのだから。」 あとはためらう…