「零の刻」その9

股間に屹立するものを感じて目を覚ました。
ここ数ヶ月なかったことだ。
これは運命だ、そう己に言い聞かせる。
ペレが彼の元に現われ、再び力を使うことが
必要とされている、力を取り戻すべく
運命に導かれたといえまいか・・・
いやはたしてそうだろうか?
あの人を再び愛するための口実を求めている
だけではないのか・・
ここ6ヶ月の性的フラストレーションのはけ口に
しようとしているだけではないのか?
ともあれ服を着て、タクシーをつかまえ、インペリ
アルホテルを目指した。
そこの31階はツアー一行のために改装されており、
貸しきり状態だと聞き及んでいる・・
ホールもエレベーターの中も、えらく大きく感じられる。
そこの13号室の前に立ったが、ドアにもたれかかって、
しばらく背中を丸め、手を組んで躊躇していたが、ようやく
意を決し、まず静かにそのドアを叩いてみて、次に幾分強めに叩いてみた。
そこでドアの奥から答える声が聞こえ、ナイトガウンに身を包んだあの人が
姿を現した。
背中の羽は乱雑に乱れており、目もかろうじてあけているという状態ながら、
ともかくフォーチュネイトをみとめて、ドアのチェーンを外し、中に招き入れてくれた。
後ろ手でドアを閉め、しっかりとペレを抱きしめる、己の腕の下で腹部を上下させて
いるさまは、何か小動物のように思え、口づけすると、辺りに火花が散ったかのように
感じられ、長く架せられた鎖が解かれ、望む力の端緒が得られたようにすら思えた・・・
ガウンの肩紐を腕に沿ってずらせ、床にすべり下ろすと、腰と胴まで顕わになった。
黒く広がった乳輪の片方に舌を沿わせ、白く甘美な母乳を味わうと、フォーチュネイトの
頭を抱え、そして小さく呻いた・・・
その肌は柔らかく、古いキモノを思わせる心地よい香りに包まれている・・・
そこでまだ整えられていないベッドにペレによって押し倒されたかたちになったが、
服を脱ぐため一端身体を離した。
そうして離れてみると、ペレの身体のラインから腹部が際立って見える。
そこでフォーチュネイトは、ペレの傍らに跪いて、顔から喉、肩から腰と口づけしていくうちに、
己の呼吸が乱れているのが感じられ・・・
顔をそらすように後ろを向けさせ、背中に口づけをしてから、
手で脚の間の暖かく湿った感触を確かめ、指をそこに沿わせると、ゆるやかに身体を震わせて、
両手で枕を握り締めた。
後ろに寄り添って、そこからペレの中に押し入り、胃の辺りに腹部の柔らかさを感じているうちに、
目が焦点を失っていき、「Oh God(嗚呼)」と呻いていた。
そうして左手をペレの下に差しいれ腰を支え、右手を軽く腹部の緩やかな曲線に沿わせながら、
ゆっくりと動くと、ペレもそれにあわせるように動き始め、すべてがスローモーションのように
感じられるようになり、ペレの呼吸が激しく早くなるのを感じているうちに、ペレが叫んで、
腰を彼から離した。
もし回復していたなら、その瞬間に熱い迸りとともに、光が堤を切ったように溢れ、身体中を輝かせ、
気を静めているうちに、アストラル体が己の肉体を抜け出すはずであったが・・・
何も起きなかった・・・
ペレを乱暴に抱きしめ、顔を首に沿わせて、その長い髪に頭を埋めながらも、もはや悟らずには
いられなかった・・・
やはり力は残っていない・・・
軽いパニックを感じながら、焦燥感に包まれてはいたが、疲れのまま眠りに落ちていったのだ・・・