2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ワイルドカード7巻 7月20日 午後1時

ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月20日 午後1時 呼び鈴が鳴って<Old Mcdonald had a Farm ゆかいな牧場>のメロディが流れた。 まさに今の気分にぴったりの曲ではなかろうか。 実際何が出てくるか知れたのじゃないのだから。 そこで家政婦がド…

ワイルドカード7巻 7月20日 正午

ジョン・J・ミラー 1988年7月20日 正午 ぎらぎら光るコインのような太陽が高く 投げ出されたような空のもと、 重く淀んだ中天に、 朦朧とした靄のような雲はかかっていても、 それ自体に動きもなく、怒るがごとく 照り付ける光の矛先を鈍らせるものではなく…

ワイルドカード7巻 7月20日 午後1時

ジョン・J・ミラー 1988年7月20日 午後1時 緑色の肌をした9フィートのジョーカーが一人でクリサリスの棺を 軽々と担いでいた。 この男にかかっては重い棺も靴箱のように思えてならない。 教会から伸びている弔問客のその行列に付き従うかたちで、ブレナン…

ワイルドカード7巻7月20日 午後2時

ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月20日 午後2時 「うまくいくと思ってたんだがね」 そう応えたディガーはホチキスの上に 座っていて、その横のコーラのカンの 方がまだ大きい。 作業台の上には他にもピザが載っていて、 三つに切り分けられたピザはジェ…

ワイルドカード7巻 7月20日 午後2時

ジョン・J・ミラー 1088年 7月20日 午後2時 「フェードアウトだな」受話器に向かってそう訊ねると、 短い沈黙の後に答えが返されてきた。 「ご名答」 「どうやって俺を見つけた?」そう訊ねると、 また沈黙が流れたが言葉も返されてきた。 「久しぶり…

ワイルドカード7巻 7月20日 午後2時

ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月20日 午後2時 「ハートマンはエースなんだ」 いきなりディガーはそうまくし立て始めた。 「WHOの視察旅行に出る前の記者会見で そいつを知ったんだ」 「どうやって?」ジェイがそう言葉を向けると、 ダウンズは…

ワイルドカード7巻 7月20日 午後7時

ジョン・J・ミラー 1988年7月20日 午後7時 ブレナンとジェニファーが教会に着いたそのとき、 烏賊神父は<永遠なる悲惨の聖母教会>の前にいて、 「あなた方が最後ですよ」と声をかけてくれた。 「少し待っていただけたら、話を聞けると思います。 クオシ…

ワイルドカード7巻 7月20日 午後9時

ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月20日 午後9時 電話帳でオーディティの番号が見つかるはずもなければ、 当然オーディティなんて名で載ってるわけもないだろう。 ディガーが言うには、彼らにもエヴァン、パッティ、 ジョンという本名があって、そ…

ワイルドカード7巻 7月20日 午後10時

ジョン・J・ミラー 午後10時 通りがどんな状態かはわからないにせよ、 このまま追っていったほうが確実か。 オーディティの歩みは特段速いというわけ でもないのだ。 そうこうしているうちに他に邪魔の入り そうにない人影のないうらぶれた路地に 入っていて…

ワイルドカード7巻 7月20日 午後10時

ジョージ・R・R・マーティン 午後10時 今回は呼び鈴を鳴らさないことに決めた。 以前エジリィにひどいめにあわされたことを思いだし、 憂鬱な気分を持て余して用心することにしたのだ。 路地に転がっていた空のゴミ箱を立てて、その上に 立ち、上にぶら下が…

ワイルドカード7巻 7月21日 午前1時

ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月21日 午前1時 「また大きくなったんじゃないか」はじめは3インチ 程度だったものだから、そう声をかけると、 「そういやそうだな」ディガーはオーラル・エーミィの 手の平の上でそう応えて、 「毎日学校に行く前…

ワイルドカード7巻 7月21日 午前1時

ジョン・J・ミラー 1088年7月21日 午前1時 ブレナンはぼこぼこのベッドで寝返りを打ちながら、 半ばまどろみ、半ば目を覚ましたような状態で、 現実からほど遠い夢に苦悶しつつ、汗に濡れ、 手足を縛る窮屈なシーツを蹴りながら、ジェニファーを 見つめてい…

ワイルドカード7巻 7月21日

ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月21日 午前3時 「コーヒーはいかがですか、ジェイ」 ヴィがそう言って声をかけてきた。 ジェイは窓越しに仕切りを掴みながら、 カウンターを見ると、そこには夜勤シフトの 時間にしては妙な客が多いようで、ジェイは 関…

ワイルドカー7巻 7月21日 午前4時

ジョン・J・ミラー 午前4時 忘れ去られた墓地。 そこは訪れるものもなく時ばかり 過ぎて、草花の生い茂る原野の 吹き溜まりとでも呼ぶものと なっていて、墓石のいくつかは 顧みられることのないまま朽ち ようとしているようだった。 ブレナンはその墓石を見…

ワイルドカード7巻 7月21日 午前4時

ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月21日 午前4時 鍵はとりたて特別なものではなかった。精々 三回捻るくらいだったろうか、 そのくらいでなんとかできて、バネ仕掛けの 鍵を外すことができた。 そこでドアをわずかばかり開け、暗く冷ややかな ワイルドカ…

ワイルドカード7巻 7月21日 午前4時

ジョン・J・ミラー 1988年7月21日 午前4時 不意にそこで相手を間違えていたことに気付き、身を 翻して、墓地を囲む途切れた壁に手を伸ばし、上から掴んで、 身体を持ち上げると、墓地の門の前に停まった車の フードにもたれるようにして煙草を吹かしている …

ワイルドカード7巻 7月21日 午前6時

ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月21日 午前6時 ジェイは一度目を開いたがすぐに閉じることになった。 灯りが目にきつく頭がずきずき疼き、瞼の奥の鼓動が 雷鳴のように感じられ、顔の左側に鈍い痛みが 張り付いているようにも感じていた。 口の…

ワイルドカード7巻 7月21日 午前8時

ジョン・j・ミラー 1988年7月21日 午前8時スキッシャーズ・ベースメントはまだ混みあって いるにも係わらず、薄暗く数日前に来たときと 同じ匂いがたちこめている。 客もバーテンダーも同じ顔触れのままだ。 もっとも今回はブラジオンは顔をだしていない よ…

ワイルドカード7巻 7月21日 午前8時

ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月21日 午前8時 後ろ半分はパロミノ・ポニー(尾と尻尾が白い 黄褐色の小型の馬)を思わせるもので、前半分も 医者にしては若く見えるドクター・フィンが 「何があったんだ?」ジェイのお腹に包帯を まきながらそう声をか…

ワイルドカード 7月21日 午後5時

ジョン・J・ミラー 午後5時 汗びっしょりで目が覚めた。 まだ半ば夢の中にいる気分で、その夢を 思いだしていた。 友や愛するものたちが何者かに殺されて いるのにどうすることもできないという やりきれない夢だった。 そして椅子に腰かけ、何かに耳を澄ま…