2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ワイルドカード7巻 7月23日 午前11時

ジョージ・R・R・マーティン 午前11時 どうやらつけられているようだった。 タクシーのサイドミラーを見つめ、 「追ってきているようだ」と言葉にすると、 「何ですって?」タキオンはそう呟いて、 後ろを大きく振り返り、後ろのボルボを 見て絶句していると…

ワイルドカード7巻 7月23日 午前11時

ジョン・J・ミラー 午前11時 アンジェラ・エリス本部長は吸殻の盛り上がった 灰皿で煙草をもみ消して、さらにもう一本に火を つけて目の前で座っているブレナンに対し口を開いた。 それは不快感を隠そうともしない高く跳ね上がった 声だった。 「いつまで黙…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後1時 

ジョン・J・ミラー 午後1時 着ていたデニムのジャケットで包むようにした ジェニファーを抱え、下水道を下っていた。 具合は悪くなっているように思えてならない。 体温は下がっているのに、熱があるようでしきりに うわごとのような聞き取れない言葉を呟い…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後4時

ジョージ・R・R・マーティン 午後4時 「あんた、NePhiネフィって名なんだな」 ジェシー・ジャクソンのリムジンの幌によりかかり、 そう声をかけていた。 タキオンはHyatt Regencyハイアット・リージェンシィの 中で新しい候補者の擁立について話し合っていて…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後4時

ジョン・J・ミラー 午後4時 「1946年のあのとき、私は医学校に通っていました」 ミスター・ボーンズはお茶を一口飲んでから続けた。 「ワイルドカードがばらまかれて、私の体が歪み学校に いられなくなりました。 黒人というだけでは十分な理由ではなく…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後4時

ジョージ・R・R・マーティン 午後4時 低く呻くようなタキオンの叫び声と同時に肉を 引き裂くような湿った嫌な音が響き渡っていた。 指も骨ももはやそこには残されておらず、少年が 一人そこに立っていた。 飛び散ったタキオンの血潮を顔や革ジャケットに 浴…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後6時

ジョン・J・ミラー 午後6時 そこは烏賊神父の詰所だった。 ブレナンは闇の中ひたすら時を待っていた。 神父は席を外していて、ジェニファーは長椅子で 平和な寝息を立てている。、 そこでブレナンはそこにあった小さな白黒テレビを つけた。 そして音声を落…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後8時

ジョージ・R・R・マーティン 午後8時 「ジョージがいたらいいのに……」 ジェイは少年がそう零したのを聞いた時、 それはジョージ・ブッシュのことだと思っていた。 病院の待合室にはTVが二台あり、 どちらも党大会を映し出していて、何回か ジョージ・ブッシ…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後9時

ジョン・J・ミラー 午後9時 トンネルの中は予想通り暗く人影もなく静寂に満ちていた。 クリスタルパレスには警察の監視がついているが、クリサリスの 用意したこの地下トンネルから続く秘密の入り口のことは 知られていないと考えたが、その通りのようだ。 …

ワイルドカード7巻 7月23日 午後9時

ジョージ・R・R・マーティン 午後9時 勢いよく両開きのドアが開かれて、 「ご家族ですか?」と声をかけられた。 えらく疲れた声だった。 ジェイは腰を上げると、「友達ですよ」と応え、 ブレーズのいる方に立てた親指を向け、 「こいつは孫ですよ」と言い添…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後9時

ジョン・J・ミラー 午後9時 ブレナンは亡霊の存在など信じていない。 暗いトンネルの闇の中から聞こえてきた声が クリサリスの声のように聞こえてきたとしても、 それはあり得ない話だ。 棺に納められたその姿を実際この目で確認した ではないか。 棺の窓か…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後10時

ジョージ・R・R・マーティン 午後10時 公園は熱くじめじめしていて、至る所で焚火が焚かれている。 ジェイは歌声や叫びの聞こえていた方向に向かい、木々の 間を抜け、テントを見て回りサーシャを探していた。 もはや時間は関係なく、勝利の予感に沸き立っ…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後10時

ジョン・J・ミラー 午後10時 「どうしてここがわかった」 それを聞いたフェイドアウトは、 「おいおい、今更そんなことを聞くなよ」 そう言って黙りこんだところに、 「レージィ・ドラゴンだな」そう言葉を被せると、 「わかりきった話じゃないか」フェイ…

ワイルドカード7巻 7月23日 午後11時

ジョージ・R・R・マーティン 午後11時 調子っぱずれのコーラスのような唄声が 闇を縫って聞こえている。 レオ・バーネットが聞いたら耳を覆うので はあるまいか、と思えるようなそういう類の 唄声だ。 道自体は左に曲がっているが、ジェイは 構わず、木の…

ワイルドカード7巻 7月24日 午前3時

ジョージ・R・R・マーティン 午前3時 手が火を噴いたように痛み、起きているかどうか 定かではないが、おそらく夢を見ているのでは あるまいか。 いつもの悪夢とはいえ、いつもと違うのはコーン頭の 男が叫び、目を開けようとしたところでその先が あったの…

ワイルドカード7巻 7月24日 午前11時

ジョン・J・ミラー 午前11時 クリサリスが微笑んでいる。 こんなかたちで再び会うことになろうとは。 妙な気分だ。 間違いなく死んだはずなのに、これでは ちょっと街を出ていただけのようではないか。 そんな思いにとらわれながら、ブレナンが ぎこちなく微…

ワイルドカード7巻 7月24日 午前11時

ジョージ・R・R・マーティン 午前11時 闇の中から誰かの声が響いてきて、 「不公平と言うものだろう」 そう聞こえた後に、 「口付けが必要なんだ。 あいつは充分に一緒に過ごしたでは ないか。 このうえまだ待つ必要はあるかね?」 「それがあの方の望みなら…

ワイルドカード7巻 7月24日 正午

ジョン・J・ミラー 正午 ブレナンはひとまずジョーカータウンクリニック を目指すことにした。 路上には、昨夜の余韻が残っているということか、 ハートマンやらジャクソンといった襷をつけた 千鳥足のヨッパライがまだたむろしているのは フィンが言った通…

ワイルドカード7巻 7月24日 正午

ジョージ・R・R・マーティン 正午 「ブレーズ!」 ジェイは小声でせわしなくそう囁きかけていた。 少年の目は閉じていたが、筋肉の強張りぐわいを 見てわかった。 気を失ってはいない。 そう確信していたのだ。 もちろんふらふらしているだろうし、おそらく …

ワイルドカード7巻 7月24日 午後2時

ジョン・J・ミラー 午後2時 今回は向かう場所も望む相手もはっきりしている。 クインの庭園は午後の日差しに照り映え、これみよがしな 威容を誇っているに違いない。 あれだけの庭園を維持するにはそれなりの造園技術が あるか、きちんとした業者を雇うかし…

ワイルドカード7巻 7月24日 午後3時

ジョージ・R・R・マーティン 午後3時 ジェイは階段の方から聞こえる足音に、 目を開けた。 実に静かだ。 どうやら眠っていたらしい。 さもなくばうつらうつらしていたか…… 気を失っていたか…… そいつは定かじゃないわけだが。 そこでマットの敷いてあった方…

ワイルドカード7巻 7月24日 午後4時

ジョン・J・ミラー 午後4時 呼び鈴が鳴らされた時、ブレナンは覗き窓から 相手を確認することができた。 フェイドアウトだ。 苛々してどうにも落ち着きのない様子が 見て取れた。 そこでブレナンが笑顔でドアを開けると、 「それじゃ訊くがな、クイン」 フェ…

ワイルドカード7巻 7月24日 午後5時

ジョージR・R・マーティン 午後4時 「実に新鮮で」そう言って、「強く溢れんばかりだ」 そう言葉を継いだブレーズは、マットの上で 全裸となって、エジリィの上に跨っている。 エジリィはというと、脚で腰を挟むこみ、 汗の飛沫を飛ばしながら迸る情熱のまま…

ワイルドカード7巻 7月24日 午後5時

ジョージ・R・R・マーティン 午後5時 「それじゃ顔を上げさせて、躍らせてみせようか」 それはブレーズがピードモント公園で初めて チャームを見た時、浴びせかけた言葉だった。 記憶がそこに戻って、マスターとやらがそれを 味わっているのだ。 チャームは…

ワイルドカード7巻 7月24日 午後9時

ジョン・J・ミラー 午後9時 どうやら先に押し入った奴がいるらしい。 寝室に続く窓のところまで先に行って、下の 非常階段のところにいるジェニファーに 上ってくるよう視線で促しつつ、そう考えて いた。 ガラス切りのようなものです一部が切り取られて い…

ワイルドカード7巻 7月24日 午後10時

ジョージ・R・R・マーティン 午後10時 「外套をとってくれ」 少年はエジリィに舌を這わせたまま、 ティ・マリスは目に貪欲な光をぎらつかせ、 首に吸い付いたままながら、少年の口から そう言わせ、静まり返ったところで、また ちゅうちゅうといった吸うよ…

ワイルドカード7巻 7月25日 午前4時

ジョージ・R・R・マーティン 午前4時 また悪夢を見ている。木々や階段や、コーン頭の 怪物の出る例の奴だ。 コーン頭が振り返る、振り向いた…… と思ったところで、ジェイは暗闇の中で目を覚まし、 叫んでいた。 そこで「ジェイ?」と深い落ち着いた声がして…

ワイルドカード7巻 7月25日 午前7時

ジョン・J・ミラー 午前7時 結局最初の航空便がでるまで、一晩待つことに なった。 ジェニファーは眠っていたが、ブレナンは眠る ことができずにいた。 座ってスペードエースのカードを見つめている 内に眠りそびれてしまっていたのだ。 そうしている内に、…

ワイルドカード7巻 7月25日 午前9時

ジョージ・R・R・マーティン 午前9時 天井が開いて、初めて朝の光が 射し込んできて、 それからブレーズがふらふらと 下りてきた。 フードに隠れて表情は窺えないが、 おそらく死人のように青白く、 疲れ切った顔をしているに違いない。 前に進み出たサーシ…

ワイルドカード7巻 7月25日 午前10時

ジョン・J・ミラー 午前10時 空港は疲れ切った代議員達が帰路につく姿で ごった返していて、ある種の人々にとって、 それは忘れえぬ瞬間だったのかもしれないが、 ブレナンには係わりのない話だ。 目を覚ましたジェニファーと共に、小型の 猫運搬ケースやら…