ワイルドカード7巻 7月24日 午後5時

   ジョージR・R・マーティン
       午後4時


「実に新鮮で」そう言って、「強く溢れんばかりだ」
そう言葉を継いだブレーズは、マットの上で
全裸となって、エジリィの上に跨っている。
エジリィはというと、脚で腰を挟むこみ、
汗の飛沫を飛ばしながら迸る情熱のままに歓喜
声を上げていて、
「ゆっくりでいいのだよ。Precious one類稀なるものよ」
少年の声でそう漏れ聞こえたが、もちろんそれは
ブレーズの声ではあるまい、ヒルのようにその首に
すいついているあの化け物の声に違いない。
その小さな目は閉じられ、少年の身体から迸る
感覚を味わっているのだ。
「女とは違った味わいがある」そう言って、
「とても激しいから、もっとゆっくりの方がいい。
エジリィ・ジュ・ルージュよ、ゆっくりとだ」
しおらしいばかりにエジリィは動きを緩め、
歯を見せて笑いころげ、
「終わりにして差し上げましょうか」などと言って
少年の胸をまさぐりはじめた。
ジェイがたまらず情事から顔を背けると、
傍にハイラム・ワーチェスターのいるのに気付いた。
その見慣れた顔からどうにもならない痛みを感じ
とりながらも、「ほどいてくれ」ジェイはそう囁いて、
「やつらが夢中になっているうちに」と言い添えたところで、
エジリィがまた叫びをあげ、歓喜のままにかすれた声を
上げていて、ハイラム・ワーチェスターは何も言えず、
肉体同士の立てる、湿ったぶつかりあう音に交じり、
隣の部屋からチャームの歌まで聞こえてきたところで、
ハイラムは顔を背け、何も言わず出て行った。
「そうだ」ティ・マリスは少年の声でそう宣言すると、
少年は絶頂に達していて、エジリィはその脚で腰を
きつく絞るようにしつつ、またからからと笑い始めて
いたのだ。



     ジョン・J・ミラー
       午後5時


烏賊神父の詰所に戻ると、ジェニファーは
目を覚ましていて、神父とチェスに興じて
いたが、ブレナンを見つけると、立ち上がり。
キスをして、強く抱きしめ、
「私が寝ている間に、どんなたちまわりを
しでかしていたのかしら?
もう少しで死ぬところだったのじゃないの?」
「違いない」ブレナンはそう応え、同意して、
投げ出すようにソファーに腰を落とし、深い
溜息を一つついていると、
「何があったの?」そう訊いてきたジェニファーに、
「手詰まりだ。手がかりもなければ、探る当てもない。
ブラジィオン、ワーム、オーディティ、モークル、
クオシマン、どいつも違っていた。
残された日記にも何か書かれていなかった。
そして手がかりが記してあったかもしれない
ファイルも焼け落ちてすでにない。
すべて消え失せてしまった。
サーシャにエジリィ、あのお方とやらも行方知れずと
きたものだ」そう告げると、
ジェニファーが傍に腰かけ、ブレナンの頬に手を添えた
ところで、「誰かに訊くことはできませんか?」と
烏賊神父が言いだして、
ブレナンはかぶりを振って答えたが、それは自分でも
弱々しいと思えるものだった。
「その当てはないんだ。神父様」と応えたところで、
「私ならいかがでしょう」と小さな声が聞こえてきて、
その声の先に、ホムンクルスが一人いた。
長椅子の後ろではにかむようにしているその姿に、
「いつからそこにいたのですか?」烏賊神父がそう訊くと、
「たいした時間じゃありませんが、待たせていただきました。
他にできることは何もありませんでしたから」
「話してくれるか?」闇の中に手を伸ばすように
そう促し、「話した名前で聞き覚えのあるものは?」と
言い添えると、
「エジリィなら」とホムンクルスは応え、
「その名なら聞き覚えがあります」
「そうか」ブレナンはそう相槌を打ち、
「だとしても、誰もその居所が掴めないでいる」
「ロフトにはいなかったのでしょうか?」
「ロフトだと?」ブレナンはそう被せ、腰を
上げ前のめりになったところで、
「そうです。サーシャがおかしな行動をとり始めて、
あの方がその理由を知りたがったので、兄弟の二人が
サーシャとあの女が一緒にいて、あの女の後をつけ、
イーストリバーの近くののロフトまで行ったことは
わかりましたが、そこで消息を絶ってしまいました」
「その住所は覚えているな?」声を低くしてそう訊くと、
「覚えていると思います」ホムンクルスはそう応え、
ジェニファーはブレナンに視線を向けてきて、
「今度は一人じゃいかせないから」そう言ってくれた。
ブレナンは頷きながらも思っていた。
まだ日は落ちていなかった(打つ手はある)、と……