2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ワイルドカード「手繰られしものたち」その2

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン雨がじとじと降りしきる、そうしてメルセデス製リムジンの屋根を濡らしていく。 「上院議員、会食では影響の強い方々と大勢お会いになるのでしょうね」 まだ若く見える黒人の青年がひょろりとした面を輝かせて、運転席…

ワイルドカード4巻「手繰られしものたち」その1

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン ‘マクヒースはジャックナイフを持ってる…’ (「マック・ザ・ナイフ」の)歌ではあるように マッキー・メッサーはもっといい物を持ってる。 ジャックナイフよりもずっと隠しやすいもの… マッキ―はクルフルステンダムの…

ワイルドカード4巻「手繰られしものたち」その1

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン唄にも例えがあるように、マクヒースにジャックナイフとくりゃ、 マッキー・メッサーにゃ隠し玉がある、容易に見せない切り札さ・・・ ディーゼルfarts(屁:排気)でCool Airすました大気をBlowing切り裂いて Kurfurs…

ワイルドカード4巻「手繰られしものども」その3

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン 位相の変化を解き、再び大地を踏みしめ、スキーマスクを脱いだ。 「俺を撃ちやがったな、(位相を変えなければ)死ぬところだったじゃねぇか」 Anenekeアネッケにくってかかったその声には殺気がみなぎっていたが、 …

ワイルドカード4巻「手繰られしものたち」その4

手繰られしものたち ヴィクター・ミランNECのラップトップを片手で支えたまま、注意深くあたりをうかがいつつ、 Bristol Hotel Kempinskiブリストルホテル・ケンピンスキイのロビー を忙しくセイラは駆けていく。 おそらく情報の信憑性を確かめるべくoutside…

ワイルドカード4巻「手繰られしものたち」その6

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン「生きとし生けるものの世界へようこそ、上院議員、とはいえ期間限定かもしれんがな」 その言葉を脳の一部で知覚しながら、ハートマンの意識はゆっくりと世界を認識し始めていた。 舌には微かな苦味が、耳には旋律を、…

ワイルドカード「手繰られしものたち」その7

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン「何か打つ手はないものか」ハイラム・ワーチェスターはそう呟きながら、顎髭の下で指を組み、 窓の外に広がる、ベルリンの曇り空に視線を据えている。 ディガー・ダウンズが広げたカードはクラブの3だった、これもま…

「手繰られしものたち」その8

手繰られしものたち ヴィクター・ミランそれはFederai criminal office連邦刑事局から来た男だった。 シティ・ホールの対策本部で、デスクの角で煙草の箱を軽く叩くようにして 煙草を取り出し、それを唇の間に咥え込んだ・・・ 「これが地球人の流儀だという…

「手繰られしものたち」その9

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン「あの悲鳴ときたら」アネッケと呼ばれた赤毛の女が囀っている。 「豚どもの一人はJewユダ公だったじゃない」 まだ朝早く、ラジオからカタカタいう雑音とともに、誘拐に対する 憶測というものが流れていて、テロリスト…

「手繰られしものたち」その10

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン同士モルニヤはため息をつきつつ、腰を下ろした。 鋭敏な感覚に反応しているのだろう、首筋と手甲の毛が逆立つのを感じている。 とはいっても能力としては高いものとはいえず、対処の手段もみつからない。 おそらく互…

「手繰られしものたち」 その11

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン「ヘル・ドクトル」タキオンは自然と鼻の脇をこすっていた、苛立ちが高まっているのだ。 もう二時間もつき合わされている。 そうして外部の情報も一切摑めていない・・これでは何もしていないに等しいではないか・・ …

「手繰られしものたち」その12

2時30分 ハイラム・ワーチェスターが英語で囁き、 タキオンがそれをドイツ語に訳している 「ウルフさん、それにギムリ、聞こえていますか」 ハイラムの言葉には揺れ動く感情が感じられる。 「上院議員をかえしていただきたい、我々には 個人として交渉す…

「手繰られしものたち」その13

手繰られしものたち ヴィクター・ミランドアを見つめていた、表面の白いエナメル塗装が剥がれ落ちて、その下から緑にピンク、 茶色の導線が覗いている、誰かがナイフ投げの練習でもしたかのようだ・・この部屋には 他に誰もいないのは明らかなのに・・あの口…

「手繰られしものたち」その14

手繰られしものたち ヴィクター・ミラン おまえが欲しい その声に、ハートマンはむさくるしく小さな部屋を見渡した。 ウルリッヒは行きつ戻りつしながら不機嫌な面をさらしている。 がたいのいいウィルフリードは腰を下ろし、細心の注意を傾けてアサルトライ…

「手繰られしものたち」その15

「また雨だ」タキオンにすがってザヴィア・デズモンドがこぼしている。 真顔を通し、何度も聞いたその言葉を聴いて同じように丁寧に応じる。 デズは友人なのだから、と己に言い聞かせながら・・・ そうして添えた手を傘にずらしてデズと一緒に耐えながら、ス…

「手繰られしものたち」その16

「Political Police国家警察の人間だ」口の中の食べ物をくちゃくちゃ噛みながらニューマンが応えた。 「もちろんPopo国警などと略しはすまいが・・」 「ヘル・ニューマン・・」 機械工のつなぎを着た男が困惑の視線を送っていたが、かまわずニューマンは続け…

「手繰られしものたち」その17〜18

「Bastardあの野郎ども」 レインコートの裾から雫を滴らせながらギムリが息巻いている・・・ 「Cocksuckersやつら俺たちをはめやがった」 シュラウドとスクレープは、嘆いているAardvarkアルドヴァルクの傍で、 薄く汚れたマットレスの上で身を寄せ合ってい…

「手繰られしものたち」その19

シュラウドがアルドヴァルクの上にミイラのように覆いかぶさっている。 ベッドルームに積みあがった5リッターのプラスチック容器に入った水に 包帯を浸し、額に乗せて、己に言い聞かせるようにぶつぶつ呟いている。 その様子を瞳に宿る悪意を隠そうともせず…

「手繰られしものたち」その20〜21

Brandenbergブランデンベルグ平原の西側、都市部にも日が落ちようとしていて・・ 小さなラジオからは東方の音楽が零れ、小さな部屋が熱帯のように感じられている・・・ 遺棄されたビルであるにも係わらず、暖房から吹き上げる熱によって、同士ウルフの身体に…

「手繰られしものたち」その22〜23

ギムリはそのぼこぼこした頬に涙が溢れさせ、「もうたくさんだ」とこぼしながらすすり泣いている・・・ 「医者に連れて行くんだ、今すぐにだ」 そういって屈みこんで首に手を回し、苦悶の表情を浮かべている。 シュラウドは包帯に隠されて表情自体はうかがえ…

「手繰られしものたち」その24

ウルリッヒがその大きな拳を振り回して叫んだ。 「それでどうなったというんだ」 スツールに腰掛け膝に手を置いたウルフは、 目に見えて年老いて見える。 弁護士と活動家という二つの顔を使い分けてきた男ながら、今回のことはこたえたらしく、酸っぱいもの…