「手繰られしものたち」その20〜21

Brandenbergブランデンベルグ平原の西側、都市部にも日が落ちようとしていて・・
小さなラジオからは東方の音楽が零れ、小さな部屋が熱帯のように感じられている・・・
遺棄されたビルであるにも係わらず、暖房から吹き上げる熱によって、同士ウルフの身体に湿気が篭っていて、神経をすり減らしている・・・
ウルリッヒは安っぽいカーテンを窓から取り払って悪態をついた
Christ(くそ)」伸びをして続けた「何だか匂いが篭ってるぜ、隅でどいつか粗相したんじゃないのか・・?」
壁の脇、隅にマットレスを敷いたうえに、傷を負った腹を押さえ、泣き声を立てながらアルドヴァルクがうずくまっている・・・
ギムリがその傍らに寄り添って、その醜く小さな顔には苦悶の表情が浮かべている・・・
「いい状態じゃねぇ」侏儒がどう話すと
「病院に連れて行かなければ」とスクレープが答えた。
それに対しウルリッヒが顎を突き出し、首を振って否定してのけた。
「駄目だ、こいつは決まったことだ」
シュラウドがギムリの隣で膝を折り、アルドヴァルクの手を取って、毛深い額にあてて言った。
「熱があるようだ」
「何をいっている?」ウィルフリードが平たい顔に困惑をにじませてから言葉を被せた。
「もともと犬やけだものは人より体温が高いものじゃないのかね」
その言葉を耳にしたギムリが素早くウィルフリードに駆け寄り、脚を払って腹の上に馬乗りになって、何回も何回も打ち据えていて・・
シュラウドとスクレープは身を引いて身構えている・・・
ウィルフリードは手で顔を庇いながら、訳がわからないというように涙目になりながら言葉を発した・・・「おい、これは何のつもりだね」
「このStupid Bastard莫迦野郎)が!」ギムリの咆哮が響き渡った。
手を風車のように振り回しながらさらに叫んだ「ナットはどいつも変わらねぇ、どいつもこいつも皆同じだ」
「同士、頼むから落ち着いてくれないか・・」
モルニヤが制止に入ったところで、ギムリは顔を生肉のように赤くしていたが、仲間を肩に担ぎ上げ、アルドヴァルクの傍らに戻った、またもや混乱は回避されてしまったのだ・・・

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ギムリがなぜ放置されているのだ・・・
誰かに殺されてもおかしくないはずなのに
パペットマンは不平の声を上げている・・・
ともあれ復讐よりも生き延びることが優先されるべきだろう・・・
やつらに関心が向くなら好都合というものだ・・
それを煽るのが最善の道というものだろうから・・・