ワイルドカード7巻 7月23日 午後6時

      ジョン・J・ミラー
        午後6時


そこは烏賊神父の詰所だった。
ブレナンは闇の中ひたすら時を待っていた。
神父は席を外していて、ジェニファーは長椅子で
平和な寝息を立てている。、
そこでブレナンはそこにあった小さな白黒テレビを
つけた。
そして音声を落として眺めたアトランタの光景は
信じられないものだった。
何度も同じ光景が映し出されていた。
スローモーションでタキオンが手首を失ったところを
映し出していたのだ。
さすがに気分の悪くなるのを感じつつも耳を澄ますと、
出血も多く、身体の負担も重く、致命的なものでは
ないかということだった。
あの小柄な異星の男が持ち直すことを祈らずにはいられ
なかった。
友であり同士とも呼べる存在だった、手を携え群れ子や
シャドウ・フィストと戦ったこともあった。
タキオンはブレナンの行動原理を理解している数少ない者の
一人で、なぜキエンとそしてシャドウ・フィストと戦わねば
ならないかも知っている。
タキオン自身も同様の重荷を背負っているのだ。
そこで何度めだかわからない惨劇を見つめていて、
ポピンジェイが映りこんでいることに気づいた。
あの私立探偵はアトランタで何をしているのだろうか?
クリサリスの件から手を引いたのか?
あるいは新しい手がかりをアトランタでみつけたという
ことだろうか?
そんなことを考えていると、烏賊神父が戻ってきた。
大きな革張りのバッグを携えてブレナンの前に置き、
「どう励ましていいか言葉もないわけですが、ダニエル」
そう向けられた言葉に、
「あなたは充分俺の力になっている」と応えていた。
そして革のバッグを開けると、そこには予備の弓が
入っていた。
警察に取り上げられた他にも、まだ残されたものが
あったのだ。
これだけあれば充分だ。
そう己に言いきかせ、
バッグから黒いつなぎを取り出して椅子にかけ、
再び闇の中、待つことにしたのだ。