午前3時
手が火を噴いたように痛み、起きているかどうか
定かではないが、おそらく夢を見ているのでは
あるまいか。
いつもの悪夢とはいえ、いつもと違うのはコーン頭の
男が叫び、目を開けようとしたところでその先が
あったのだ。
闇に覆われて、じめじめした中に悪臭だけは感じ取れ、
指を動かそうとしたものの、肩と手首が焼けるように
痛む、しかももう方法の手は麻痺したようでいて、
したようでいて、微かに動く足を動かし、身を捩っては
みたが、どこかにぶらさげられているように心もとなく、
暗い深淵に漂っているように思えてならない。
闇のただなかに、掠れた嘲笑と囁くような声が響いている。
コーン頭の男に話しかけられているのだ。
そこでジェイは考えた。
こいつの名前がわかれば、なんとかなるのではあるまいか。
それでもその声を聞くつもりにはなれなかった。
いつもの夢で、木々に潜み、聞きたくない秘密を囁く声を
思い起してしまっていたのだ。
そのとき背後から足音が聞こえてきて、
喉から恐怖があふれ出しそうになった。
追ってきているということか、逃げねばなるまい。
足をじたばたさせたもののどうにもならず。
そこで視界が開けて、目に光が差してきた。
そこでジェイは目を閉じて、微かに呻きを漏らしていると、
「Cut him down<それはそれ>というじゃありませんか!」と
聞き覚えのある声がすぐ近くで聞こえてきた。
誰が言っていたかしらないが、そんなことを
言っていていいものだろうか。
そう思い、目をパチリと開けると、ぼやけて
見えにくいが、部屋の様子が見えてきた。
倉庫だな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、両手が
縛られてパイプにつながれていることもわかった。
そこで身体を揺さぶってみて、紐が緩まないか試して
いると、人間百足が近づいてきた。
両手は金属パイプにつながれていて、目のない男が
見下ろしているではないか。
サーシャだ。
その名を口にだそうとしながらも、気にかかって
いた名前がそれだっただろうかと思っていると、
落ちるような感覚に襲われていて、脚がもつれ、
体重を支え切れず、頭を固い床にぶつけてしまっていた。
そして呻いていると、
「まだ投薬した方がよくはないか」遠くでそんな声がする。
「ティ・マリスの元に連れていくまではもたせなきゃならん
からな」とさらに言葉が聞こえてきて、
<御免被る>ジェイはそう応えようとしたが、
聞き取れないうめき声しか出せず、誰かが折れた
肋骨に蹴りをいれたとみえて、いきなり身体の
向きが変わっていて、目に明るい光が飛び込んできた。
そうして肘に鋭い痛みを感じながら、再び眠りに
落ちていたのだ。