ワイルドカード7巻 7月24日 午前3時

    ジョージ・R・R・マーティン

         午前3時


手が火を噴いたように痛み、起きているかどうか
定かではないが、おそらく夢を見ているのでは
あるまいか。
いつもの悪夢とはいえ、いつもと違うのはコーン頭の
男が叫び、目を開けようとしたところでその先が
あったのだ。
闇に覆われて、じめじめした中に悪臭だけは感じ取れ、
指を動かそうとしたものの、肩と手首が焼けるように
痛む、しかももう方法の手は麻痺したようでいて、
したようでいて、微かに動く足を動かし、身を捩っては
みたが、どこかにぶらさげられているように心もとなく、
暗い深淵に漂っているように思えてならない。
闇のただなかに、掠れた嘲笑と囁くような声が響いている。
コーン頭の男に話しかけられているのだ。
そこでジェイは考えた。
こいつの名前がわかれば、なんとかなるのではあるまいか。
それでもその声を聞くつもりにはなれなかった。
いつもの夢で、木々に潜み、聞きたくない秘密を囁く声を
思い起してしまっていたのだ。
そのとき背後から足音が聞こえてきて、
喉から恐怖があふれ出しそうになった。
追ってきているということか、逃げねばなるまい。
足をじたばたさせたもののどうにもならず。
そこで視界が開けて、目に光が差してきた。
そこでジェイは目を閉じて、微かに呻きを漏らしていると、
Cut him down<それはそれ>というじゃありませんか!」と
聞き覚えのある声がすぐ近くで聞こえてきた。
誰が言っていたかしらないが、そんなことを
言っていていいものだろうか。
そう思い、目をパチリと開けると、ぼやけて
見えにくいが、部屋の様子が見えてきた。
倉庫だな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、両手が
縛られてパイプにつながれていることもわかった。
そこで身体を揺さぶってみて、紐が緩まないか試して
いると、人間百足が近づいてきた。
両手は金属パイプにつながれていて、目のない男が
見下ろしているではないか。
サーシャだ。
その名を口にだそうとしながらも、気にかかって
いた名前がそれだっただろうかと思っていると、
落ちるような感覚に襲われていて、脚がもつれ、
体重を支え切れず、頭を固い床にぶつけてしまっていた。
そして呻いていると、
「まだ投薬した方がよくはないか」遠くでそんな声がする。
「ティ・マリスの元に連れていくまではもたせなきゃならん
からな」とさらに言葉が聞こえてきて、
<御免被る>ジェイはそう応えようとしたが、
聞き取れないうめき声しか出せず、誰かが折れた
肋骨に蹴りをいれたとみえて、いきなり身体の
向きが変わっていて、目に明るい光が飛び込んできた。
そうして肘に鋭い痛みを感じながら、再び眠りに
落ちていたのだ。