ワイルドカード「綾なす憎悪」パート5その7

                綾なす憎悪

                        パート5

                 スティーブン・リー

「それは許されることではない」間抜けにも、ヌール・アル・アッラーのサンダルに手を伸ばし指を向けた格好になりながらその言葉を聴いた。
パペットマンのおかげで、気力は保たれている。
それでも山のごとく聳え立つヌール・アル・アッラーの姿を見上げることしかできず、滝のごとき汗が額に滴り、嫌悪の眼差しを向けているサィードが、かがむこともせず、主に向けられた手をそらすべく、蹴りを入れてきた。
その状況でヌール・アル・アッラータキオンの言葉に笑みを向けながら答えた。
「我に挑むというのか、アッラーを信じておらぬのであろう、感じるぞ、Drタキオンよ、そなたの精神から覗くパワーもな、我の精神も破壊しうると考えているのであろう、かつてそなたの連れ合いの精神を砕いたと噂されているように・・・
だがそうはならぬ、我にはアッラーの守護がある、我に仇なすものは、アッラーの裁きが下るであろうぞ」
その言葉は平然としたふうでありながらも、ヌール・アル・アッラーの発する光が弱まったように感じられ、己を縛る力も弱まっているのも感じられる。
預言者が言葉で力を誇示しようとも、タキオンの精神攻撃が効を奏しているのだろう、ならば希望もあるというものだ・・・
タキオンに注意が向いているうちに、その煌く脚に直接触れさえすれば・・・
エメラルドの輝きは光を増してはいるが、わたしには気づいていない・・・
そこでパペットマンは勝利を確信し、叫びをあげようとした・・・
ところがである、ヌールはすばやく反応して、グレッグの手を避けた、
気づいていたのだ・・・
それだけではない、タキオンが近くにいる以上、力を使うことは・・・
            そう危険すぎる
パペットマンが叫んで答えた。
    気づかれている、気づかれているというのか

そこでどさっという鈍い音と叫び声が背後から届いた、後ろを確認すると、

守衛の一人が、タキオンの後ろに立ち、いきなりウージィの台尻で頭を殴りつけたようだった、
殴られたエイリアンは膝を突き、頭を庇いつつ、うめきをあげ、立ち上がろうともがいていたが、
もう一度乱暴に小突かれて、モザイクのちりばめられたタイルの床に沈みこんだ、意識を失いは
したが、まだ呼吸が感じられる、生きてはいるのだろう・・・
そこでヌール・アル・アッラーが、彼に手を必死でのばそうとしているわたしを
見下しながら笑い、それから言葉を押し重ねてきた。
「理解したであろう、余を守るはアッラーのみならず、民の信仰にもまた守られておるのだ、それに対して貴様はどうだ、ハートマン上院議員、カーヒナに糸を巻きつけたまではよかっただろうが、我はそれを察知しておったのだ、今度はそれを我に試そうというのであろう?
我とて操りの糸は備えておるぞ、それをそちにふるうは喜びであろうな、アッラーの糸もてそちに破滅の舞を踊らせようぞ・・・
カーヒナは危険を語り、サィードはくびらせてくれと願った。
そこで我は、呼び寄せた方がよいと考えた、すなわちそちの糸を、そちを招くアッラーの糸となし、悪なる存在を神への贄に供そうと考えたのだ。
そなたが己が悪行の数々を己の民の前で自白し、アッラーの許しを請いつつ、自ら生命を絶ったら効果的であろうとな、そうは思わぬか・・」
そしてグレッグを指で示してさらに言葉を押しかぶせた。
「さよう・・さぞや見ものであろうな」
己の内に恐怖が満ちている、ひぃっ、という声もする、それはパペットマンの上げた声であったのだ・・・