その19

       ヴィクター・ミラン
      1988年7月21日
         午後8時



シダの葉が勢いよく落ちて顔にかかる中、
立ち尽くし・・・
マッキー・メッサーはセイラと大柄な男が
連れ立ってレストランから出て行くのを
見ていた・・・
こうして一日中あの女の跡をつけながら・・
なんとか人混みに紛れて様子を伺って
きたのだが、いっこうに一人になる様子は
ない・・・
この女は同じ部屋に黒い肌の人間でもいたら、
すぐにシャワーを浴びるようなそんなタイプ
の人間に違いない・・・
女にはそうした潔癖なやつが多いが・・・
マッキーにはそれは異様に思えてならない・・・
それでもこの年代の女性特有の病理だと己を納得
させながら・・・
むかし馴染みのあった黒いやつは随分具合が
よかった、などと思い出していると自然と
頬が緩んできた・・・
なぁに今にうまくいくさ・・・
そう独りごちていると・・・
人通りはすくなくなってきたが・・・
腹がすいていることも思い返されて来た・・・
早朝にジョーカーたちの中にこの女がいるのを
見つけてからずっと張り付いていたのだ・・・
中に這入りこんでたべておけばよかった・・・
そううまくいかなかったからこうしているわけ
だが・・・
そう考えているとまた沸々と怒りが湧き上がって
きた・・・
あの売女をかたずけなくてはなるまい、それが
あの方のためなのだ・・・
できるだけ早く・・・どんなに乱暴なやりかたで
あろうとも・・・
そんなことを考えていると・・・
あの女と新しい連れ合いはエレベーターに向かって
いった・・・
腕を組んでやがる・・・
おそらくこれからしっぽりやるつもりに違いない・・・
何も変わらない・・・
女というものはそういうものなのだ・・・
よたよたとちんけな子男になど歯牙にもかけない代議員達の
間を掻い潜り・・・
後を追っていると・・・
エレベーターに入っていって、目の前でドアが閉められた・・・
「しめしめ」そう声を立てて笑い声をあげていた・・・
あとは何回で降りたかだけ見て追えばいいだけなのだから・・・
唇を舐めながら・・・
盛っている最中に間に合えばいいのだが・・・
そうすりゃ二人まとめて切り裂けるというものだろう・・・
一体あの大きな男はどれほどのものを持ち合わせている
だろうか・・・
そう考る・・・
その期待のまま、ジーンズの前を湿らせながら・・・