ティーポット

            アンデルセン

昔、ある所に自分は、磁器であり、その長い注ぎ口、たっぷりした
もち手を自慢するティーポットがいました。
でも、ふたのことは口にしませんでした。
割れて、かすがいで塞いであったからです。
まわりの人は、ふたのことばかり話します。
言われなくても、自分の欠点ぐらい、知ってるわ。
茶碗には、取っ手があり、砂糖入れには、蓋。
でも私は両方持っていて、さらに口があるんだもの。
私は特別よ。
若くて元気なころ、ティーポットはこう言っていました。
あるとき、お茶を入れる手元が狂い、ティーポットは床に
落ちました。
やがて中に土を入れ、植木鉢として使われるようになりました。
ティーポットは思いました。
私の中に命が生まれ、花となって咲きました。
幸せでしたわ。
誰もが花をほめました。
私も、本当に嬉しくなりました。
やがて花はきれいな植木鉢に移されることになり、
私のからだは真二つに割られ、激しい痛みを感じました。
それで今、私は、庭の隅に投げ捨てられ
古い壊れ物として横たわっています。
けれども、私にはすばらしい思い出があります。
この思い出とともに行き続けているのです。