「手繰られしものたち」その35

叫び声が止んで、ブーンという唸りも治まった。
それは永遠に続くのではないかと怖れてはいたが、ともあれ
焼け焦げた髪と骨の匂いが鼻につき、むかむかしてならない・・・
Boschボスによって描かれた中世の、幻想絵の饗宴のように感じられる・・・
死にゆくテロリストたちの間から味わわれる感情はもはや灰のようにしか感じられはせず、パペットマンすらむさぼろうとはしていない、その中で怖れのみが広がっていく・・・
唸りともうたごえとも思しき音が近づいてくる、Moritatモリタット:マック・ザ・ナイフのバラードだ。
いかれたエースが殺しに酔いしれている、その感情は己の脳髄をかきむしるように、つながった先から感じられている、ハートマンはそのつながりを苦痛に感じたが、マッキーによって手を下された女の身体が脚の間に覆い被さりおもしとなっていて、死の感触に押しつぶされそうになっていた・・・
怒りの感情が喉から迸りそうになっていたが、何とかそれを押しとどめ、そうして糸に手を伸ばし、手繰り寄せた、強く・・・
そこで鼻歌がとまり、木靴の響きも聞こえなくなった・・
ハートマンが見上げると、マッキーがその妖しく光る眼で己を覗き込んでいるではないか・・・
そいつはアネッケの身体を乱暴に脚の間から押しのけた、身体の割には力が強いようだ、それとも己を鼓舞していたからだろうか、そうしてたてられた椅子の上にのせられたハートマンは、死を予感し、その課程をも恐れ慄いた。
己の呼吸が高まり押しつぶされるようにすら感じるなか、マッキーの感情自体が膨らんでいっているのを感じる、それをパペットマンは情け容赦なく撫でさすり、増大させていった。
そしてマッキーは椅子の元に跪いて、ハートマンのズボンの前チャックを引き下ろし、その下に指を挿し入れ、上院議員のそれを手繰りだして、その先を口に含み、頭を上下に動かし始めた、初めはゆっくりと、そしてしだいにスピードを増していき、舌をそれの周りで回転させて沿わせながら・・・
ハートマンは呻きはしたが、この状況は歓迎すべきものではない。
それではここで終わっていいのかねパペットマンが嘲りの声を上げた。
それじゃ何をしたというんだ
いつもどおり助けるとも・・・それには最良のパペットが必要となる
強大な力と・・予測のできない行動は不安要素じゃないか
そこで万華鏡の中の破片の移動を思わせる快楽がおしよせ思考を遮った・・・
これで手に落ちた、これぞ最上のパペットというものだ、情愛で結ばれているのだから、セイラとかいうあの病んだビッチ(売女)相手では適わなかったことだ・・・
ああ、私はどうなっているのだ
生きているとも、そしてこの怪物を密かにニューヨークに伴うのだ、そうすればもはや我々の前に生きて立ちふさがる存在などいなくなろう・・
さぁ、気を沈め楽しむがよい

もはやパペットマンの独り舞台となっている、マッキーがそれをふくみ、パペットマンがその感情をふくむように味わっている、熱くぬめった塩のような感情だ、そうして迸って・・・頭を後ろにそらし、我知れず叫んでいた・・・
かくして絶頂に達した、それはサキュバスが死んで以来、
なかったことだったのだ・・・