「零の刻」その17

精神のシールドを用いて、誰にも気づかれないようにして外に出た・・・
ゼロマンと同じ手を使ったのだ・・・
血がカーペットに飛び散っていたため、モリの死体は部屋においたままにすることにした・・・
そこにタクシーが到着し、ペレが現れた・・
その傍らには、ペレと臥所をともにしていたあの男、フォーチュネイトより幾分小柄なブロンドで口ひげをはやした男だ、そうしてペレの手をとりながら声をかけてきた
「終わったのね」
「そうだ」ハイラムが答えた「すべて終わった」と・・・
「これでツアーに戻れるのね」
一行を見渡してからハイラムは答えた。
「多分そうできると思う」と・・・
「よかった」その声にようやく安堵が広がっていくように感じられた・・・
「みな心配してたのよ」
ハイラムが黙って頷いていると、
タキオンがフォーチュネイトにすりよるようにして話しかけてきた。
「礼を申し上げます・・ハイチにグアテマラ、そしてシリアでは適わなかったことです・・
ツアーの誰一人として暴力の渦に巻き込まれることなくおさまったのですから・・」
「かもしれまいが・・ともあれここで雁首をそろえていてもしょうがあるまい、引き上げたほうがよかろう」
「それがいいでしょう」とタキオンが応じたが
「フォーチュネイト」とペレが声をかけてきた。
「ジョッシュ・マッコイというの・・」
フォーチュネイトは振り払うように首をふりつつ頷いて応じると、マッコイがペレの背中に回していた手を放して、笑顔で語りかけてきた。
「噂はかねがね伺っていますよ」
「シャツに血が飛び散っているわね・・」
ペレが割り込んできた。
「何があったの?」
「心配ない・・すべて終わったのだから」
「また血が流されたのね・・アストロノマーとのときのようなおそろしい暴力沙汰がまたあったのね・・」
それにはフォーチュネイトは答えなかった
「それで・・これからどうするんだ」マッコイが尋ねてきた。
GCジャヤワルダナとさる方にお会いするために僧院にいくことになるだろう・・」
「本気か?」マッコイがそう揶揄するのに対し、「そんな」とペレが言葉をもらしていた
「それはやめたと思っていたのに・・」
そしてしばらくフォーチュネイトを見つめていたが、ようやく意を決したように言葉を漏らした。
「慎重に、といったじゃない、もっと自分を大事にしたらどうなの」
「してるとも・・」そしてフォーチュネイトは答えていた
「これでいいんだ」と・・