2008-01-01から1年間の記事一覧

ザヴィア・デズモンドの日誌

ザヴィア・デズモンドの日誌 G・R・R・マーティン 1月30日 エルサレム おそらくこの日誌が人目にふれるのは、わたしがこの世を去ってからのことでしょう。 今夜起こったことを記すべきかどうか迷いましたが、そのときにはわたしはこの世にはいないのです…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪パート5」その2

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー 1987年2月3日 火曜 ダマスカスホテルはHamidiyahハミディヤのSuqスーク(市場)に近く、古びた空気清浄機のたてる異音が混じりはするが、グレッグには市場の喧騒を通して、その活気とエネルギーを感じとることができ…

ワイルドカード4巻「綾なす憎悪パートⅤ」その3

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー そんなにうまくいくはずがなかったんだ。秘書のジョン・ワースンが色々事前に調べていて、知らせてくれはしたが、実際にウージィとソビエト製のオートマチックを構えたアラブ人の守衛が壁際に配置されているのを目に…

ワイルドカード4巻 綾なす憎悪パート5

綾なす憎悪 パート5 スティーブン・リー 1987年2月1日 日曜 シリア砂漠ぴしゃりとナジブに一度打ち据えられたが、ミーシャはひるまなかった。 「あの男が来るのです」と言い放ちすらしたのだ。 「夢でアッラーが告げたのです、ダマスカスに赴き、あの男に会…

ワイルドカード5巻最終章おうさまのおうまも・・7

おうさまのおうまも……Ⅶ G.R.R.マーティン 「そんなばかな話があるか」 ブルーダーが怒りに震え、一揃いの皮製ドライビンググローブを握ったまま、膝にたたきつけて興奮しているのがわかる。 「何をいってるのかわかっているのか、百万ドルといえば一財産だ、…

ワイルドカード5巻第4章第1節

BREAKDOWN リ−アン・C・ハーパーボディガードのペアがジョヴァンニを残して先に出、サングラス越しに通りに目を配り、危険がないか確かめている。 一方右側の人ごみに目をやると、ボディガードに先導されて、ドン・トマッソが出てきた。 ドン・ト…

ワイルドカード4巻内なる鏡その1

内なる鏡 メリンダ・M・スノッドグラス4月のパリ、クリの木は輝かんばかりのピンクと白の装いで彩られ、Tuileries Garden チュイルリー庭園の彫像の足元には、その花弁が雪のごとく降り積もり、セーヌのぬかるんだ 河水の上にも浮かぶさまは、カラフルな泡…

ワイルドカード4巻内なる鏡その2

内なる鏡 メリンダ・M・スノッドグラスエテックス通りでタクシーを呼び停め、レフトバンクカフェと書かれたメモを突きつける、それはフランス語で書かれた走り書きでした。 振り向くと、まだネオンこそ灯ってはいませんが、「XXX、Le Filles(トリプルX…

ワイルドカード4巻「内なる鏡」その3

内なる鏡 メリンダ・M・スノッドグラスベルサイユ、そこは王の威光に捧げられた最も大きな建造物であり、そこに立ち止まりParquet寄木細工の床を踏みしめ、シャンパングラスに映る景観は、まるでわが故郷が歪んで写ったかのようにすら感じられ、故郷に帰っ…

内なる鏡 その4

内なる鏡 メリンダ・M・スノッドグラス

ワイルドカード5巻モータリティその2

不滅ならざるもの ウォルター・ジョン・ウィリアムス 三十分後、ファーストフードの容器でいっぱいになったポリ袋を二つ抱え、アンドロイドは天窓を開けた。浮かび上がりそれを通り抜けて屋根を横切ると、裏路地へ続く通気孔を滑り降りる。ゴミを投げ捨てる…

ワイルドカード5巻モータリティその1

不滅ならざるもの ウォルター・ジョン・ウィリアムス 駆け抜ける 意識が稲妻のごとく精神に満ちてくる。 例えるならば最新式のレーザープリンターで出力される文章の群れといったイメージが 近いといえようが、そんなものではない、さらに複雑なもの、巨大で…

ワイルドカード5巻モータリティその2

不滅ならざるもの ウォルター・ジョン・ウィリアムス わずか30分ほど後、ファーストフードの容器のつまったプラスチックのゴミ箱 を2つ抱えて浮かび上がり、天井を横切り通風孔を抜けて、大空の光のもとに 滑り出る。 通りには、ゴミの収集場があるのは知…

ワイルドカード5巻不滅ならざるものその3

不滅ならざるもの ウォルター・ジョン・ウィリアムス 公衆電話に貼り紙をしているのが見える。 赤、白、青で彩られたポスターで、「大統領にはバーネット氏を」という文字が 描かれているが、バーネットという情報は入手できてはいない、そんな思考を よぎら…

ワイルドカード5巻「不滅ならざるもの」その4

不滅ならざるもの ウォルター・ジョン・ウィリアムス 展望デッキに降り立ち、バーに立ち入ると、ハイラム・ワーチェスターが部屋の真ん中に 一人で立ち尽くしていた、青白い顔、うつろな目をして突然振り返って拳を振り上げ ながらも・・・ ハイラムはしばし…

ワールドカード5巻「不滅ならざるもの」その5

不滅ならざるもの ウォルター・ジョン・ウィリアムス 「それでもうけはあったというのかね?フードプロセッサー君」マクシム・トラヴセニクは、モジュラーマン を組みなおした際に書き上げたメモが積みあがった堆積の上に腰掛け言い放った。 「明日は特許局…

ワイルドカード5巻「不滅ならざるもの」その7

最初に視界に飛び込んできたのはブラウン管が破裂して、ちぎれたコードがウサギの耳のようにぶらさがっているTV、そして部屋の真ん中にはマットレスの乗せられたシーツのない簡易ベッドと、安手の家具が部屋を手狭にしているのが見てとれる。 アンドロイド…

ワイルドカード5巻「不滅ならざるもの」その6

不滅ならざるもの ウォルター・ジョン・ウィリアムス 「オペレーターにも問題はある」トラヴニセクはまた語り始めた。 「フェルミ粒子は二次元ワールドの世界−平面感覚上に存在するのであって、時空D次元感覚に基づくものではないからだ」どうやらレンスラー…