不滅ならざるもの
ウォルター・ジョン・ウィリアムス
わずか３０分ほど後、ファーストフードの容器のつまったプラスチックのゴミ箱
を２つ抱えて浮かび上がり、天井を横切り通風孔を抜けて、大空の光のもとに
滑り出る。
通りには、ゴミの収集場があるのは知悉している、そこにゴミを持っていくのだ。
コンクリートの地面に降り立ち、重い息をつくと、喉から溜息のような音が漏れ
出て、それは枝にとまった鳥のさえずりのよう。
そうしてジョーカータウンに満ちている様々な音に混じり合っていく、路上には
スノットマンと呼ばれているジョーカーが何者かに襲われ、その血が敷石に吸い
込まれている、その悲しく息をつく打ち捨てられた無様な姿は悪夢の中のでき
ごとのようだが、フリーカーズから出てきた客は、グロテスクな外見なのも、酒
の飲みすぎで、胃の内容物を戻している者も珍しくないため目立ちはしない・・
地表から数フィート浮き上がった状態で、静かにゴミ袋を降ろしてから、水平を
保ちつつ、路上に目をこらすと、トラブニセク博士の荒い息遣いが耳に飛び込ん
できた。
ズボンを足首にまで降ろしてひっかけ、女性を壁に押し付けたかたちで抱えあげ
た様子で、共にいる女性は、顔の下半分を手の込んだ手製のマスクで覆っている、
見える上半分は崩れてはいないが、魅力的とも、若いとも言いがたいものであり、
チューブトップの上に、きらきらした銀のジャケットをひっかけ、赤いミニスカ
ートと、白いプラスチックブーツを見につけ、その口からは鳥のさえずりに似た
息吹が仮面の下から漏れ出ている。
おそらくこのわずかばかりの時間で軽く１５ドルはすってしまうことになるのだろう。
博士はチェコ語で何やらもごもご囁いてはいるが、相手は職業的な態度と、焦点の
合わない目で壁を見つめながら、その唇からは、激しい動きににつかわしくない、
安定した音楽的な音が流れ続けている。
モジュラーマンはこれ以上見続けるべきではないと判断し、風を求めて飛び立つ
ことにした。
それは彼には羽ばたきをうながす音に感じられたのだ・・・
