2010-01-01から1年間の記事一覧

ワイルドカード6巻 その33

スティーブン・リー 1988年7月19日 午後5時 グレッグは当然のことながら他の候補のほとんどをパペットにしている・・・ さほど難しいことではない・・・ 数秒触れるだけでそれはことたりる・・・ 名残を惜しむかのように握手をするだけでいいのだ・・ す…

ワイルドカード6巻 その34

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月19日 午後6時 「私の育った場所では、招かれてもいない人間が当然のように席について いるなんてことはありませんでしたよ」 タキオンは7回目のpink Slip解雇通知から目をそむけつつポケットにしまいこんだ・・ …

ワイルドカード6巻 その35

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ 1988年7月19日 午後8時筋ジストロフィーが何だって、ミズ・チャールズ、連中の浮動票の心配か?」 「Christ(この男ときたら)、!」 電話を通してそう響いてきたデヴォーンの声はいつもより無愛想に思える・・・ 「Je…

ワイルドカード6巻 その36

スティーブン・リー 1988年7月19日 午後9時 マリオットのロビーでビリー・レイに呼び止められた。 「上院議員、まだバーネットと話をする気をお持ちですか? レディ・ブラックからホテルに戻ったと伝えきているのですが・・」 なんて日だ エーミィにジョ…

ワイルドカード6巻 その37

メリンダ・M・スノッドグラス ジョージ・R・R・マーティン 1988年7月19日 午後9時 ブランデーが唇に沁みて・・・ ついうめき声を上げてしまった・・・ バーテンの女がにやにやしているのに悪態を浴びせそうになりながらも・・ 自分がどんな顔をしている…

ワイルドカード6巻 その38

ウォルトン・サイモンズ 1988年7月19日 午後11時 碌なことのない一日だったじゃないか・・・ スペクターは枕が二つ並べられたベッドの上で手足を伸ばし・・ 片手にTVのリモコン、もう片手にウィスキーのボトルを引っつかみ・・・ 就寝前の決まり文句の…

ワイルドカード6巻第三章 その1

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月20日 午前7時 エンジンの奏でる重いつまびきが神経に堪えるの感じながらも・・ 飛行機の窓から広がる暗闇を見つけていたのだ・・・ seat companion客室乗務員がたち現れてタキオンにちょっかいを だすまでは・・ ス…

ワルドカード6巻第三章 その2

ウォルトン・サイモンズ 1988年7月20日 午前9時 席が空くまで45分ほど待たされた・・・ 店は繁盛しているようで、給仕の男が客の間を 行きかうさまはまるでピンボールの玉のようだ・・・ スペクターは椅子に身を押し込めるように座り・・・ 騒音には気…

ワイルドカード6巻第三章 その3

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月20日 午前11時 Pew信徒席にもたれつつ、 上唇に滴る汗を味わっている。 そうすることで息のつまるような暑さが和らぐとでもいうかのように。 <Our Lady of Perpetual Misery永遠なる悲惨の聖母教会*>の 奥には4…

ワイルドカード6巻第三章 その4

ウォルトン・サイモンズ 1988年7月20日 午前11時 ファットマンに出くわして些か仰天したが、 ウィスキーをがぶ飲みしてなんとか気を静め、 ベッドの端に腰掛けて背中を丸めて広げた新聞の 一面に目をやると、 <ハートマン、本日パークで何を語るのか>と…

ワイルドカード6巻第三章 その5

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月20日 午前12時正午 トロールが一人でクリサリスの棺を捧げ持っている。 彼はジョーカータウンクリニックの保安主任を務める巨漢の男であり、 赤子が眠るかのごとく揺れる棺は、 葬列と共に教会の裏手に向かい、 祈…

ワイルドカード6巻第三章その6

ウォルトン・サイモンズ 1988年7月20日 午後1時 ピードモント・パークは人いきれで溢れている・・・ スペクターが演壇に向かうには人ごみを突っ切っていかなければ ならなかったが・・・ 白黒のタイツに身を包んだ姿はかなり間抜けに見えるに違いない・…

その8

ヴィクター・ミラン 1988年7月20日 午後6時 廊下の突き当たりにあるドアの前に・・・ 背が高く痩せぎすの男が立っている・・・ コーヒーとクリームを混ぜたような褐色の肌の 男が・・・ 1531と標識のついたドアの前に立って・・・ ドアを閉め鍵をかけ…

その9

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ 1988年7月20日 午後8時 スポットライトがジャックの目には眩しい・・ テレビの口角レンズに対してはショットガンの ように身体が身構えるようになっているのだ・・ そうしたステージに対する恐怖に取り込まれると …

1988年 7月20日 その10

ヴィクター・ミラン 1988年7月20日 午後10時ピーチツリーのタイルに音が反響しているように思えて ふらつく脚のまま腕にしがみついている・・・ セイラはワイン二杯で酔っ払ってしまった・・・ そういえばアルコールを口にするのものも久しぶりだ・・・ …

ワイルドカード6巻第三章 その12

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月20日 午後11時 弦の上の指を下らせながら・・・ ヴァイオリンの調べにのせてため息を奏でている・・・ そうしていると私服警備員が胡乱な目つきを向けてきた・・・ タキオンが丁重に頷いて見せると・・・ 相手が誰…

1988年 7月20日 その11

スティーブン・リー 1988年7月20日 午後11時 獲物だ・・・ ねじくれ焼け付くような感情が近づいてくるのを感じ パペットマンが声を立てている・・・ それをグレッグが厄介に感じていると・・・ マッキィが壁をすりぬけて寝室に姿を現した・・・ 歪んだ…

ワイルドカード6巻第三章その13

スティ−ブン・リー 1988年7月20日 午後12時深夜 顔全体を覆うゴム製の道化のマスクを被って・・・ ジョーカー達の多くがアトランタのじとつく湿気から 涼を得ようとして外に出ている中・・・ グレッグは彼らに紛れていった・・・ 気温は華氏90度くらい…

ワイルドカード6巻第三章その14

ウォルトン・サイモンズ 1988年7月20日 午後12時深夜 見えてはいないが、そこにいるのはわかっていた・・・ 束になった人々、グレッグとその取り巻きたちが・・・ スペクターの方に向かってきている・・・ 思いもよらず音もなく・・・ 御誂え向きにすぐに…

ワイルドカード6巻第四章その1

1988年7月21日 午前1時 「まったくなんてざまだ・・」 その切り裂くような鋭い声に、思わず 弦に当てた弓を取り落としてしまった・・・ その声の主のハイラムが、真っ赤に充血して 落ち窪んだ目でこちらを睨みつけているでは ないか・・・ 「ハイラム、時…

ワイルドカード6巻第四章その2

ヴィクター・ミラン 1988年7月21日 午前5時 「本気であそこに出て行くおつもりですか、マダム」 制服を着た運転手が窓を少し開け・・・ 雨後の筍のようにピードモントパークに増えたテント村 に胡乱な目を向けながらそんな言葉をかけてきた・・・ 日もま…

ワイルドカード6巻第四章その3

スティーブン・リー 1988年7月21日 午前9時 どうもあまりよく眠れた気がしない・・・ 開票が朝方まで及んでそのまま戦勝祝いに もつれこむことになったのだ・・・ 1800票超えを達成して、2081票 獲得も確実と思える中・・・ 「あと300票なら…

その4

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月21日 午前9時 「アイオワは神に祝福された豊かなトウモロコシの州だからな!」 タキオンには何回もある予備選でこの男がなぜここまで盛り上がれるかが 理解できていなかった・・・ 「ほらアル・ゴア上院議員に4票入…

その5

ウォルター・ジョン・ウィリアムス 午前9時 電話が鳴ったのは、最初のキャメルを吸っていたときだった・・・ 確か書類バッグに入れていたはずだがすぐには見当らず・・・ コーヒーテーブルの下にあるのを見つけ、長椅子の上で寛ぎながら 電話に出た・・・ …

その6

ヴィクター・ミラン 1988年7月21日 午前9時 そのときは問題ないと思えていたのだ・・・ 気がついたら眠気眼を擦りながら機械的にインタビューを こなしていて・・・ 日曜日の第三面に載る補足記事のようなあるいはタンク機関車が 給水のために停車するよう…

その7

メリンダ・M・スノッドグラス 午前11時 「ドクター!」 柔和な顔に不似合いなその鋭い瞳は・・・ マリオットのロビィにいる何者をも見逃さないと みえる・・・ タクはその言葉に軽く会釈して返した・・ 「師父」 「党大会から逃れておいでですかな?」 「幾…

その8

スティーブン・リー 午前12時正午 テーブルの上にはルームサービスの食事とコーヒーが あるが手付かずのまま冷めていて・・・ ソニー(TV)の画面が省みられることもなく揺れている・・・ そこで長椅子に腰掛けたタキオンの姿は・・・ まるで木でできた神像…

その9

メリンダ・M・スノッドグラス 午後1時 乱闘になりかけて引き離された人々がいる・・・ 見ればニューヨークの代議員とフロリダの老女が 角つき合わせている最中のようだった・・・ 女性は二人いて唸るようにして爪を振り上げている・・・ そこにはハイラムも…

その10

メリンダ・M・スノッドグラス 1988年7月21日 午後3時 ガラスで仕切られたCNNのブースは・・・ 部屋の中央で天につるし上げられたような場所に違いなく・・・ 気の進まぬままタキオンはそこに上がっていきながら・・・ こころの裡にジャーナリスト達と…

その11

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ 1988年7月21日 午後3時 電話は鳴り続けている・・・ それはベロ・モンドでの会食中ずっと なり続けていて・・・ いい加減うんざりしかたところだった・・・ 隣り合った席のアメリカを代表する人々も 嫌な顔をしている…