ワイルドカード6巻第三章 その1

         メリンダ・M・スノッドグラス
            1988年7月20日
              午前7時



エンジンの奏でる重いつまびきが神経に堪えるの感じながらも・・
飛行機の窓から広がる暗闇を見つけていたのだ・・・
seat companion客室乗務員がたち現れてタキオンにちょっかいを
だすまでは・・
スチュワーデスが覆いのついたトレイを見せて眉根を吊り上げている
ではないか・・・
「ありがたいが、そいつじゃなくて、飲むならば・・・、
Screwdriverスクリュードライバー(ねじ回しの意味もある)が
あるといいのですが・・・
オレンジジュースのたっぷりきいたものならなおいいですね・・」

そういって曖昧に微笑みを返すも応えはないが・・・
そこで向けられた視線は明白に酔いどれに向けられたもので・・

窓の外に湧きあがるthunderheads積乱雲(ねじ頭の意味もある)を
眺めながらその下を思いやっていると・・
スチュワーデスが飲み物をもって戻ってきた・・・
タクはチップを渡そうとポケットに手を突っ込むと・・・
分厚い解雇通告の束が転がり出てきた・・・
ハイラムのよこした忌々しい代物だ・・・
それからチップを渡しはしたものの・・・
ハイラムの無礼で無感情な態度が思い起こされてむかついてならない・・・
ワーチェスターのこんこんちきが・・・


そう内心悪態をつきながらも想いは別のところに向かっていった・・・
デヴィッドソンは何をほのめかそうとしたのだろうか?
羊飼いの例えを引き出しわけだが・・・
ジョーカーが羊を思わせてそんなふうに反応してしまったのだろうか?
それならば王はいったい何に対してのことだというのか?
うまく伝わらなくて苛立っているようにも思えた・・・
プロの俳優というものは筋書きなしで話すことはしないものだが・・・

「哀れな羊といえば・・・」
ハンカチを取り出してすばやく鼻をかんでから・・・
羊を弔わねばなるまいか・・哀れなクリサリスのことだが・・そう一人ごち・・・
顎を両手を組んだ指に乗せ、物思いに沈んでいったのだ・・・