第七章その1

      ヴィクター・ミラン
        午前7時



まるで傷ついたこころを隠すかのように
胸から太股まで安手のタオルで包み、
セイラは息を切らしつつ浴室から出てきて、
死後硬直にでも陥ったかのような心もちで、
「もはやタキオンには頼れない」とパソコンの
画面から油粘土の塊を抉りだすような気持でそう
呟くと、
もちろんパソコンの画面は沈黙したままっだが、
ズボンに下着のみを着てベッドに腰かけている
ジョージ・スティールという名の男が、
毛深い手の甲を見つめ、頭を上げて、
「そういうこった」と応えた言葉に、
「あの計画を実行に移すのね?」と訊ね返すと、
「そうだ」と目を細めつつそう応えたポリアコフに、
「やるしかないのね」
セイラはそう応えると、踵を返し、髪を乾かすべく
洗面所に戻っていったのだ……