ワイルドカード7巻 7月22日 午前6時

      ジョージ・R・R・マーティン

           午前6時



「衣装バッグでしたらそのまま通ると思いますけど」
デルタチケットカウンターの女からそう言われ、
「申し訳ないのですが、ペットは検査が必要でしょうね」と
付け加えられて、「どうやらそのようだ」と幾分うんざり
しながら応え、そして猫用運搬ハウスを検査台に乗せていた。
こいつを見つけるのは一苦労だった。
それで疲れはてていたのだ。
チケットの確認を終えたカウンターの女は、チケットを手渡しつつ、
「これでいいですよ」とようやく言ってくれて、
「窓側の禁煙席です、乗り込んで大丈夫ですよ」と教えてくれた。
「ありがとう」ジェイはそう言いながらも、女が灰色をしたプラスチックの
箱に運搬用のタグをつけて、背後の移送コンベアに載せるのを見ていた。
もちろん用心して、古びた新聞紙で視線を悟られないよう隠すことも
忘れていない。
そうして荷物が見えなくなったところを見計らって、ジェイはコンコースを
降りて行って、ゲートを目指した。
こんな早い時間にも関わらず、空港はえらく混んでいて、列に並ばなければ
ならなかった。X線での検査で、もし銃や爆弾を持っていたら洒落にならない
ことは理解しているから、黙ってやりすごすことにした。
そして検査を免れた衣装バッグの中にダイナマイトでもいれていたらどうなった
だろうか、と想いながらも、時刻を確認していた。
離陸は6時55分の予定だから、まだ55分あるということか。
それから無事離陸したなら、もう寝ても構わんだろう、とそう思い定めていたのだ。