ワイルドカード7巻7月22日 午前10時

       ジョン・J・ミラー
        午前10時


「弓入れの中に手紙が入っているわよ」
毒蜥蜴を見るかのように手紙をみつめて吐き出された言葉に、
「何が入っているって?」ブレナンはそう返した。
「言伝の類だろうか?」
「そんなとこね」
そんな会話を交わした後、ブレナンは風呂場から出て、
タオルで手を拭いてから、ジェニファーの傍に行くと、
ジェニファーの視線は弓入れの中の白い封筒に向けられたままだ。
そこで「やっかいなことになりそうだ」とブレナンが口火を切ると、
「やっかいなこと、って?」そう言ったジェニファーの言葉に応えず、
弓入れの封筒を取り出すと、そこにはもはや見慣れた小さい手で書かれて、
おまけにスペルミスのある文字で書かれた紙が一枚入っていた。
「クリチタル・パレスから」とブレナンが読み上げて、
「手を引いた方が身のちゃめだ」と読み切ると、
「どうしてかしら?」と言って首を傾げているジェニファーに、
ブレナンもかぶりを振って応じつつ、
「行く先々でこれがあるとなると、正直気味が悪いが、
少なくとも間違っていないことも確かだな」
「パレスに押し掛ける用事でもあったのかしら?」
そう切り出したジェニファーに、
「今のところそのつもりはない。どうやら中華骨董の造詣を
深めねばならんということらしい」
そう応え、メモを折りたたんでポケットに仕舞い込み、
弓入れを担ぎ上げ、
「出かけるとしよう」そう言葉を継いでいたのだ。