ワイルドカード7巻 7月22日 正午

ジョン・J・ミラー
正午


「どういう状況なわけ?」
ジェニファーがそう声をかけてきた。
「担がれた、ということかな……」
そう応えたブレナンの声は怒りをかみ殺したものだった。
「まんまと利用されたということだ」
「そうなの?」
そこでブレナンは顔を上げ、ジェニファーを見つめていると、
「シュー・マとワームの当て馬にされた、ということかしら?」
「そういうことだな」
「直接訊いてみたらどうかしら」
そこでブレナンは黙って電話に向かい、呼び出し音が二回
なったところで、フェイドアウトが電話に出て、
「もしもし」
「嘘をつかれるというのはあまり気分がよくないものだ」
ブレナンは比較的感情を押し殺してそう伝えると、
「そりゃそうだろうとも、カウボーイ、ともあれきちんとした
時間に声を聴けて嬉しいよ」
「俺の話を聞いていなかったのか?」
「一体何の話だ?モークルの件は間違いなかったと思うがね……」
「その件は問題ない」ブレナンはそう言って、
「ワームについてだ……」と言葉を継ぐと、
「そうなのか?」ととぼけた応えが返されてきた。
「クリサリス殺しの容疑者ではなかったということだ。
あの日奴はハバナにいたそうだ……」
「そうかい、そいつは悪かったな」
暖簾に腕押しとはこういうことか。
ブレナンがそう思いつつも、
「それに個人利用の処刑人になど雇われた覚えなどない」
ブレナンが苦虫を噛み潰したようにそう言うと、
「ちょっとした行き違いがあったようだね」
「戯言につきあうつもりなどない……」
ブレナンはそう伝え、
「また何かあったら連絡しよう」
そう言葉を継ぐと、
「待てよ」ブレナンが電話を切るのを阻止しようと
するかのように、フェイドアウトはそう切り出してきて、
「クリサリスのファイルはどうなったんだ?」と言葉を
差し挟んできたが、
ブレナンはその言葉に答えず、黙って電話を切って
いたのだ。