ワイルドカード1巻 追加①その2

キャプテン・カソードと秘密のエ−ス

     マイケル・カサット
音響スタジオに入るということは、闇に飛び込むに等しい・・・洞穴を思わせる闇の中、
そこならしばしとはいえ雇い主であるフレドリック・ジブと、彼から報酬を得る手段といった
プレッシャーからすら開放されるように思える・・・
そう・・現実といった色眼鏡すら必要はなくなるのだ・・・
そうしてまどろんだような闇の中で、カールがはいってきたのを最初に気づいたのは
ユージーン・オルカウィッツだった。
カソードの相棒、犬面のジョーカーを演じている丸々肥え太った赤ら顔が常のナットの男だ。
「フューラー(総統閣下)のおでましだ、Wie gehts(調子はどうだい)」
そう声をかけながらなれなれしくうしろから肩をたたいてきたではないか・・・
「それを今確認しにきたところだったんだがね・・・」
ブリューワーはともかくとして、確かにこの男も苦手なのだ・・・
プロ意識の強いベテラン俳優でけして時間に遅れたりミスを連発したりもしないのだが・・・