第5章 その25 

      ウォルター・ジョン・ウィオリアムス


病院に着きはしたが・・・
体力の落ちているのが感じられてはいるもののそう悪くないように
思える・・・
おそらく心臓は弱っているのだろうが・・・
繰り返される検査にさらされているうちに・・・
抵抗するのにもくたびれてきていた・・・
脳波を調べ脳溢血だか何かの兆候を調べているとみえる・・・
力が逆流し・・・
立ち上がることすらできるように感じながらも・・・
それもまたエースの力の作用というものか・・・
と漠然と考えていた・・・
今までと何ら変わりはなく・・・
肉体的には何の問題もないように思えるが・・・
それは頭の中でそう考えているにすぎないということだろうか・・・
ともあれさすがに一晩入院しているつもりはないことを医者に
告げて、折れてもらうことになり・・・
そうして看護婦がいなくなったところで、ビリィ・レイに電話を
入れて・・・
遭遇したエースの詳細を告げていた・・・
「おそらくバーネットに雇われているのだろうな・・・」
ジャックはそう告げてから・・・
あいつだけじゃない、他には革ジャンを来た餓鬼もいるようだ・・」
と言い添えると・・・
「その疑いがあるというだけだろ?」レイはそう返し・・・
「あんたが出くわしたのは、ジェームズ・スペクターだ、ディマイズと
呼ばれた悪名高い男で、一つだけ言えることは、こいつに出くわしたら
けして視線を合わさないことだ・・・」
などと悠長なことを言っている・・。
上院議員に伝えてくれないか、二人のエースに狙われているとね・・・」
上院議員はそれどころじゃないだろうな、ジャックボーイ、何しろタキオン
ジョーカーどもがジェシー・ジャクソンに鞍替えしたんだからな・・・」
「何だって?」反射的に立ちあがってそう応えると・・・
「所詮は異星のくそ野郎ということだ・・・」そう悪態が返されてきた・・・
「それはいつの話だ?」そう訊ねると・・・
「黄金の臆病者が階段のところで尻を蹴っ飛ばされてのされたのと同じ頃
だろうな・・・」
ジャックはその言葉に反射的に電話を切ってから、テレビの真っ暗なままの
画面をじっと眺めつつ・・・
考えに沈み始めた、秘密のエースだ・・・
その秘密のエースは、レオ・バーネットに違いないのだ・・・
タキオンに会って、そのことを伝えねばなるまい・・・
タキオンはバーネット陣営に取り込まれているかもしれないが・・・
おそらくバーネットはフルールを利用したか、何か弱みを握ったと
いうことかもしれないにしてもだ・・・
ともあれベッドから抜け出して、クローゼットの中に収められていた
血の染みのついた衣服を取り出して着ることにした・・・
一人になったところで、やるべきことは弁えているというものだから・・・