ワイルドカード20巻編集後記より

ワイルドカードの物語は虚構の中のことながら、
少年兵の問題は現実に起こっていることです・・
この架空の歴史の中のアフリカの楽園の内にいる
人々は恐ろしい存在かもしれませんが、実際の
コンゴの現実の方が恐ろしいものであるのです。
第二次コンゴ戦争は公式には、1998年に始まり、
2003年に終わったことになっていますが、現在
においても散発的な虐殺行為はとどまらず、第二次
対戦より実際には続いているその戦闘において、
おおよそ55000もの人々が生命を落としている。
もちろんその数字は1996年から1997年の最初
コンゴ戦争の犠牲者は含まれていないにもかかわらず
この数字なのです・・・

そしてその死者には当然子供たちも含まれます。
そして恐るべきことに加害者にもまた子どもたちが
含まれるのです。
人の生命を奪うにはスーパーパワーは必要ありません、
銃があれば事足りるのです。
繰り返しますがLeucrottaにHunger,GhostにReckerと
いったキャラクターは架空の世界の子供たちですが、
現実の世界のこどもたちを取り巻く環境の苛酷さは
けして変わるものでありません。
Joseph Conradの時代には、ゴムと象牙が暗黒の中心
でしたが、今日ではそれが、金にコルタン、ダイヤ
モンドにウラニウムに置き換わっただけで、
現状は何も変わってはいないにもかかわらず、西洋の
メディアはイラクアフガニスタン、ガザといった
おなじみのHotospotに群がりはしても、午後のニュース
でもコンゴにおける死はほとんど言及されはしない。
アフリカにおいては昼夜を問わず軍隊の衝突は繰り広げ
られているにもかかわらず、その恐ろしい現実は注目
されることも取りざたされることもない。

もちろんすべての人々がそうだというわけではありません。
こどもを兵士にするような戦争を終わらせようとする活動や、
戦争の被害にあった人々に手を差しのべる組織や個人も存在
しますが、まずはGoogleやインターネットでChild Soldiers
コンゴ紛争でも可)を検索してみてください、そしてそこ
からあなたのできることを考えてください・・・
寄付でもいいし、その知識を広げるだけでもよいのです・・

現実の世界にスーパーヒーローはいないと人はいいます。
それでもここはわたしたちの世界であり、わたしたちは
ここにいるのですから・・・



GRRマーティン「ワイルドカード20」編集後記より