ワイルドカード4巻「ザヴィア・デズモンド」の日誌Ⅷその1後編

ザヴィア・デズモンドの日誌
             G・R・R・マーティン

         2月7日 アフガニスタン、カブール

アフガニスタンのことも書くべきかもしれませんが、あまり記録も残して
いませんし、カブールの景観を楽しむ余力もありはしませんでしたが、妙
ソビエト人が目につきました。
政情も安定し、かなり礼儀正しくなっているとはいえ、わずかな滞在にも
係わらず、戦火の残り火のようなものが感じられてなりませんでした。
そこで(ソビエト人の案内人から)二人のジョーカーを紹介されたのです
が、彼らに言わせるとジョーカーはIdyllic牧歌的生活を謳歌しているとの
ことですが、私はそれを額面通り受け取れはしませんでした、おそらく彼ら
にとってアフガニスタンに存在するジョーカーはその二人だけなのでしょう
から・・・

スタックド・デッキ号はバグダッドから直接カブールへ移動したわけですが、
イランはアヤトラ(イスラムシーア派の最高指導者,また、その称号を持つ
もの)の影響が強く、彼はヌール同様実質的指導者であり、ワイルドカード
感染者に対しても、ヌールと変わらない見解を示しているとのことで、国連
からそこに上陸すること自体許可されなかったという経緯があったのです、
確かにアヤトラはエースとジョーカーを分け隔てしない見解を示していると
はいえ、それは彼に言わせると、ともにサタンの申し子であるというもので、
それはジミー・カーターによる強引な人質解放作戦を許しがたいものとして
下された見解とのことでした。
秘密裏に6人のエースを派遣したと囁かれており、カーニフェックス(グレ
ッグ・ハートマンの現ボディガードで政府直属のエース、本名はビリー・
レイ)がその一人と噂されていますが、当のビリーは明快に否定して「もし
俺が係わったなら、もっとうまくやっただろうな」などと平然と嘯いており、
ジャスティスデパートメントの同僚であるエース、レディブラックなどは、
謎めいた笑顔のみ見せて、その黒いCloak外套をきつく握り締め、その下に

真相を隠し、ミストラルの父であるサイクロンもその一員であったとも言われて
いますが、ミストラルの口からもやはり真相は聞き出せませんでした。
明日の朝にはいよいよカイバル峠を越えてインド入りすることになります。
その広大な大陸には、かなり無秩序で異なる世界が開けているのであり・・
そしてそこはアメリカを除けば最もジョーカー人口の多い国なのだとか・・