「ワイルドカード」6巻第2章

ラッツ・アレイ<鼠小路>、そこは死者であろうとも、肋骨を奪われるような油断のならない小路だ。
そこにジョーカーズ・ワイルドがあった。
鼠のような連中のためにあつらわれたような場所、それがラッツ・アレイなのだ。
そこから出るものは、まっさらな煉瓦の壁に吸い込まれるようなきしむ音とともに扉をくぐりぬけまろび出ねばならないが、その扉は標準の身長向けにつくられているため、通る者のほとんどが、神経質に磨り減った襟を立て、腰をかがめて通らねばならず、店内は真珠貝を取り出したあとのぬかるみのごとく過ぎ去った栄光の残滓のごとく経年の様相を呈している。
散乱するプラスティックのフードラッパーにプロテインや炭水化物のすえた匂いが絡み付いており、入ったときの恐怖を拭うかのように安堵の息をついて出るという。
戸口には小さな姿がちらついている、ジェームス・ディーンの顔に曲がった背中、