ワイルドカード4巻第19章[zero hour] その2

ゼロ・アワー<ZERO HOUR>

ルイス・シャイナー<Lewis Shiner>

日本には犯すべからざるエチケットとして、Ofuroオフロ(風呂桶)に入る際は、石鹸を洗い流してから、湯船につかることと、Tatami-matタタミマットに乗る際の靴の脱着がある。

フォーチュネートはこころえたもので、湯船の脇で全身を石鹸の泡で包み、丁寧にプラスチックのブラシで洗い流してから、現地の人間がやるように腰にタオルを巻いて、華氏115度(約摂氏46度)に沸いた湯船に浸かり、人々が目を伏せ、彼を無視する中で、四肢を伸ばす。手足から頭まで心地よい血行が駆け巡るのを感じさらにリラックスする。

日本に来てすでに6ヶ月になるが、この時間の入浴は、彼の欠かすことのできない日課となっていた。

他の日本人同様、しきたりに生きる日々を過ごしてきたといえるだろう。

朝九時に起床、1時間、彼には30分に感じられる時間の間、

ニューヨークに意識をとばす、朝の瞑想と鍛錬の時間だ。

週に2回は、千葉市の港湾上に設営された禅シュクボウにも赴く。

午後は旅にでる、ブリジストン美術館でフランス印象派の絵画を、リッカーで木版画を愉しみ、皇居を散策しギンザでショッピングをしたのちに目的の地にいたる。

Mizu-shobaiミズ・ショウバイと呼ばれる夜の聖地だ。